70 / 70
番外編:カート解放後「エッチな玩具の開発担当と逢っちゃいました!?」(5)
交わりが終わる時まで、ずっと全部を覚えていられたらいいのに、と颯太は時々、真っ白になった記憶を手繰り寄せようと密かに努力する。
でも、藍沢にはなかなかかなわなくて、瞼を閉じて、再び開けた時、そこに愛しい人がいることを確認して、安堵する日々だった。
「また……」
「飛んじゃいましたね」
「きみ、が、しすぎる、から……」
「でも、この前より少しは我慢できるようになってきましたよ。颯太さん」
「そ、う……?」
「ええ」
藍沢は言いながら、颯太の髪を梳いた。指先が頭皮に接着して、ピリピリ、ビリビリと快楽の残滓が音を立てる。
「時々……隼人の記憶が、おれに移植できればいいのに、って思う……」
「?」
「飛ぶと、だって、何も覚えていられないんだ。もったいない」
「ふ……」
藍沢に向けてそう言うと、くすぐったそうに笑われる。
「あなたのことは、俺が全部覚えてるから」
言って、耳朶に吹き込むように囁かれる。
「だから、安心して」
ぞくぞくと駆け抜けてゆく甘い痺れに、颯太は少し肩をすくめる。藍沢にはかなわないな、と思うけれど、そうやって自分が誰かの一部になる感覚は、嫌いじゃなかった。
「それはそうと、俺は今日……もう昨日か、安心しましたよ」
「ん? 何が?」
「あの副社長にも、ちゃんとパートナーがいたことがわかって」
「えっ?」
「ま、あの人が浮気性じゃないとは限らないので、まだ要観察ですが」
「え、誰? えっ、まさか、社長? じゃないよね?」
颯太が面食らって半身を起こすと、藍沢はそんな颯太を自分の上に馬乗りにさせ、腰を掴んだ。
「そのまさか、だと思います。俺の勘からすると」
「ええっ」
「内緒ですよ?」
「それは、わかってるけど。ええっ」
藍沢の上で驚きながら身体を揺すると、いやらしい指が颯太の胸の飾りをつまんだ。
「ん」
途端に甘い痺れが湧く。こんなところ、感じるはずないと思っていたのに、藍沢にされると、それだけで、性感帯になるのが不思議だった。
「もう一戦、しますか……?」
藍沢が揶揄するので、颯太は身体を前に倒し、その唇で藍沢の口を塞いだ。
「好きだよ」
きっと誰が何を言おうと、この気落ちは色褪せない。
「隼人」
「……っ、名前で呼ぶの、反則です」
「あ」
颯太の尾てい骨に、藍沢のいつの間にか逞しくなった屹立がこすり付けられる。その甘い衝動に、颯太はもう一度、「好きだ」と呟いた。
=終=
ともだちにシェアしよう!