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第24話 梶山村村おこしプロジェクト大成功
宗方と莉良が結ばれてから半年後──。
「本日は梶山村にお越しくださりありがとうございます。村おこしプロジェクト担当の櫻川莉良です。りらくんって呼んでください!」
ある晴れた日のこと。
莉良の夢だった古民家カフェのオープン記念日には、ペラッターや動画配信サイトのファンたちが1000人も駆けつけていた。うちわを作ってアピールしている若いファンもいれば、煌びやかなワンピースに身を包んだマダムもいて幅広いファン層だ。
「皆様のご支援のおかげで古民家カフェのオープンまでこぎつけました。本当に、ありがとうございます。本日はどうぞ梶山村の名産品である梶山茶と共にくつろいでください」
古民家カフェにて、長蛇の列ができている。莉良はその店頭に立ってお客様を店内やバルコニーの席へと案内する。2階からは梶山村が一望できる絶景スポットとなっている。宗方が以前梶山に登り、丁度いい景色が見える場所を探しそこに古民家カフェを建てたのだ。
「りらくーん! 東京から来ました。梶山茶。すごく美味しいです。それと、このほうじ茶ケーキもキャロットケーキも美味しいです!」
ファンの女の子が話しかけてくれて、莉良もにこっと笑顔を浮かべる。それからは同じように声をかけてくれるお客様とお話しながら莉良の1日は過ぎていった。
古民家カフェの閉店時間となり、店にはカフェの店員と莉良、それと遠くから今日の盛り上がりを撮影していた宗方だけ。
莉良は宗方を2階のサンデッキに誘った。沈む太陽に彩られた美しい空が広がっている。
「宗方さん、本当にありがとう。古民家カフェ成功した。これも全部宗方さんのサポートのおかげ」
「そんなことはない。これは莉良、お前の実力そのものだ。よくここまで頑張ったな」
宗方は1日動き回って疲れ果てていた莉良の頬をぷにぷにとつまむ。宗方はこうやって時々、莉良をおもちゃ扱いするのだがそれも意外と心地よくて反抗しないでいる。
「明日は1日休みだろう。どこか行くか」
「えっ。行きたい! きなこも連れて3人で梶山に行こうよ。そこでのんびりしたいなあ」
「そうだな。明日は莉良に梶山村の案内をしてもらおう」
「もう、宗方さんってば色々梶山村に詳しいのに!」
「そんなことはない。まだ、知らないことばかりだ。だから教えてくれ」
「うん、わかった。じゃあ代わりに宗方さんは俺にたくさん宗方さんのこと教えて」
莉良の満足気な表情を見て宗方が微笑を浮かべる。
「ああ。身体に叩き込んでやる」
「ち、ちがっ。そういう意味じゃなくて……!」
赤面する莉良を見つめる宗方の眼差しは温かい。
またひとつ、梶山村での季節が過ぎていく。
大切な人と共に積み重ねる季節は特別だ。
梶山村が莉良に全てを与えてくれた。
愛とは何かを教えてくれたのは、宗方だった。
高く澄み切った空に昇る下弦の月が、莉良と宗方を照らす。さらにこれから先、2人が歩む未来に導くように、慈悲深い眼差しで。
Fin
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