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耽溺①
観月、おかわりしてくれなかった…兄ちゃん悲しい。
梅雨はあっという間に終わり、さんさんと陽が照っている。いい水浴び日和だ。
翌日からプール開きがあり、昼食を終え昼の授業は体育でBクラスと合同でプール。
水泳の授業のはずだが、ほとんどが自由時間で今もこうして俺は、端っこで上半身を預けぷかぷかと水中を浮いている。あーきもちいい。
「ちょっとシノ~さっきの話の続きなんだけど!!」
「あ、あーだこーだで朝も麻婆茄子は食べてくれたから、そこまで怒ってないんだけどね。今日は観月の好きなものに…」
「その話じゃなくて!!雅貴のこと~!!!」
呆れて、矢沼のトーンが変わった。怒るのも疲れたって顔してる、かわいい。
間名くんも可愛かったけど、やっぱり矢沼は男子校の花ってだけあるなー。今もBクラスの人が上半身露にしてる矢沼を遠目で見てる、そして俺は睨まれる。
すまんな、矢沼は独占させてもらう。
ふふん、と優越感に浸っていたいが
これ以上矢沼の機嫌を悪くしたくもないので本題に入る。
「間名くんと湯田がどんな話してたかとかは湯田に聞いてないから知らない。けど好意はあるみたい」
「それで?宣戦布告されたの?それなのに白旗上げたの?だめでしょ、シノ~」
白旗をあげたつもりはなかったが、日曜日の出来事を洗いざらい話したら矢沼にはそう捉えられた。
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