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楽園②

「誰から?」 「秘密」 「…十葉じゃねぇか」 勝手に見んなし。 「湯田のスケベ」 「はいはい」 全然反省した声色じゃないんだけど。まぁ、いかがわしいことないから、見られても何もないのだけど。 今度は二人で遊ぼーぜ、とか、高校での近況報告とか。 あえて矢沼の話はしていないし。 そして、十葉くんも 俺と湯田のことを聞いてきたりはしない。 でもこの男子校で半日以上を過ごすヤツらからすれば、俺たちは噂になり始めていた。 とくに今も廊下で俺を睨んでいる間名くんは、きっとその噂が信じ難いであろう。 あぁーあ…同性愛に拒絶するヤツは少ないけど、まさか男子校で三角関係になるとは思わなかった。 ぎゅ。 廊下から目線逸らして湯田が俺の腰に回した手を握って頬ですりすりする。 「…どうした」 「何を言われたって俺の湯田だから」 「……くくっ。そうだな、俺はシノのものだ」 湯田が小さく笑うのを聴いて、バカにされたと思ってそっぽを向く。 俺にとっては必死なのに。むぅ。

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