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軋轢②
無表情で俺がそんなこと言うものだから「言葉と顔が一致してねぇぞ」と湯田に突っ込まれる。
じゃあ、泣けば…湯田はもっと動揺してくれるのだろうか…
もっと俺のことでいっぱいになってくれるのだろうか…
「どんな顔してほしかった?」
まぁ、俺は
泣かないだろうけど。
「もっと寂しがってくれてもいいのに、と思ったけど」
今のままで不満はない、と俺へなにも要求しない。
それが心地よくて、同時に…---。
「もっと言いたいことあるんじゃないの、湯田」
今のも、そして矢沼のことも。
"シノには前の"素 "が減ったよね、どうして小綺麗になっちゃったの?"
"必死に縋って、綺麗な部分だけを愛されようとしてるでしょ?"
湯田は薄々気づいてる。
だって矢沼の幼なじみだから。だって、俺は綺麗にすべてを隠せないから。
それなのに言葉にしないのは、俺への気遣いもしくは、そこまで興味をそそるほどの魅力が俺にはないから。…だと思う。
落ちていく俺は、湯田のガタッと机を蹴った音で意識を戻され、湯田の瞳を見つめる。
驚いて、じわりと全身に冷や汗を掻いた。
「そう言うお前は、俺へ言いたいことないわけ?」
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