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軋轢④
先生が堪忍袋の緒が切れた顔で俺たちを漸く叱りにやってきた。
そろそろだめかなーて思ってたけど、やっぱりだめだよね、顔が真っ赤だ。
「すみません先生、話は聞いてたんですけど」
「嘘を言うな、篠川」
あちゃ、バレるか。
知らん顔の湯田の分まで謝り、黒板に書いてあった問に答えろと前へ行かされる。
チョークは鉛筆持ちのほうが綺麗に書けるんだけど、それだと擦れて字が消えちゃうんだよな…と、手が黒板に当たり擦れないように左手はチョークの持ち方を変え答えを書いていく。
どうして、他人や自分の気持ち、それへの選択に、正解はないのかな。
正解があれば、それに向かっていけるというのに。
書き終え、着席した俺はスマホを眺める湯田に口角を上げる。
間名くんとなにしてたの?
この質問はお預けのようだ。
聞いて…どうなるのって話だけど。聞いてもいいよな、だって湯田は俺の、
「湯田は俺の、だから」
「…授業前にも聞いた」
「だから……今度デート、しよう?」
俺の、恋人…だから。
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