―――…湯田は俺の誘いを断るわけはなかった。 その文化祭が土曜日ということで私服も面倒だなあ…と男子校の制服を着る。 観月には「俺の制服貸すよ！？」とゴリ押しされたんだが、サイズが大きいのが目に見えて遠慮させてもらった。 前の学校行くってだけで無駄に緊張するし、湯田とぎこちない関係だし。…明らかな喧嘩じゃないんだけど…たぶんそれがダメなんだ。 「しっかりぶつかんないと…うしっ！……んぶ！！！」 「前見て歩け、バカシノ」 下向いて湯田に会ったらなに伝えよう…とシミュレーションしてたら母校の正門あたりで当の本人と真っ正面から物理的にぶつかった。 …そういう、ぶつかり方がしたかったんじゃねぇよ、バカ。 「お、はよ…湯田」 「あぁ、おはよ」 あれ、思ったより普通じゃん。 なんだ…なぁーんだ。 「え、っと……ちゅーする？」 「…は？」 「えっ」 仲直りの印に。あと、再会(？)のハグ的な意味も込めて 「……俺まだシノに怒ってるんだけど」 うん、普通に仲直り失敗したよね。 仲直りってどうやんの、母さんと父さんキスしたら仲直りしてたからいけると思った。難しいな、恋愛。 それでも、謝ったって許してもらえる雰囲気じゃないって今、理解した。