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軋轢⑥
どうすれば俺は、湯田に嫌われない…?
「な~んか新鮮だね、ふたりがぎこちないのって」
ふんわりした雰囲気は変わらず、だけどどこかこの状況を楽しんでいるような口調で矢沼は言った。
そんな矢沼を十葉くんが横目で見据え「そんなこと言うなよ」と制す。
三人は同じ中学ってこともあり、同じ方向からここまで一緒に来たのだろうか、俺が到着して湯田にぶつかったときには十葉くんも矢沼もいた。
「ごめんなシノくん」と謝る十葉くんへ首を軽く横へ振る。だって本当のことだもんな。
「ほらほら~早く早く♪屋台も多いんでしょ?僕たこ焼きが食べたいな~」
「あっ、ちょっと…引っ張るな…!」
矢沼に手を繋がれた十葉くんは、そのまま引っ張られ人混みへと掻き消されていった。
湯田は「アイツら…」と呆れた様子でため息を吐いていたが俺はちょうどよかった。
いいな、いいな…
手ぇ繋げていいなあー俺も湯田に触れたい、と手を湯田へ伸ばした。
けど待てよ、っと伸ばした左手ピタリと止めて慎重になる。
キスだめって言われたじゃん、怒ってるからって…じゃあ手だってだめなんじゃない?
キスより手を繋ぐってほうがハードルは低いか…でも、また怒られたら落ち込んじまうぜ、ちくしょー。
「その手なに、シノ」
「んー…反射?みたいな?…あは、なんでもない」
それに、ここは楽園 じゃないし。湯田はノンケ。他者からの印象、崩しちゃいけない。
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