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相似②
前の席にいるはずの矢沼のほうを向く。
「矢沼〜」
「くっ…あはははっ、シノ、そっちはロッカーなんだけど〜?」
矢沼とは逆方向にあるロッカーのほうを向いてるらしい。
くそ、逆か。
くるっとロッカーに向いた身体を反転させて近くにいるはずだと手を伸ばす。
ガバッと抱きつき
「助けてー」と懇願する。
すると俺の体操服を整えながら頭を出すところへ誘導してくれる。
さすが矢沼。
「…ぷはっ、苦しかった」
体操服の中の酸素がなくなるかと思ったぞ、おい。と、相手を見上げる。……ん?見上げる???
「…矢沼じゃない」
「俺は高城だ」
俺より長身で体格の良い高城(たかしろ)の顔が見えて驚いた。
しかも仲良くないし。初めて喋ったし。それなのに、ハグしてるし。
…ズボンも履いてないし。
キョロキョロと矢沼を探すと近くには、いるけど両手で口を抑えて肩震わせて笑ってるんだけど。
はめたな、矢沼。
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