66 / 229
逃げられない①
矢沼が帰ってきたのは4時限目が終わって昼休みに入った頃であった。
何かあったのかとヒヤヒヤしていたが、本人は満面の笑顔で帰ってきたから拍子抜けした。
心配して損したし…
「ただいま〜……って雅貴!!やっぱあの後学校来たんだ!!シノに電話してもらって正解だったね〜」
えへへっと湯田に抱きつく。
呼び出される前よりも矢沼の周りには花が見える、ご機嫌?かわいい、妖精って感じ?
「…電話かけたら湯田機嫌悪くてすっげぇ怖いし、言葉詰まったんだからな?」
と、文句だけは言ってみる。
「シノからだって分かってたら怒らない」
真顔で言われたって怖いものは怖いから、湯田。
「…ったく。矢沼のノートがなかったら俺、電話切ってるから」
「ノート?」
「わっ!わわわっ!!シノ!それは企業秘密でしょ!?シーッ!」
人差し指を口元に当てて焦る矢沼。
なんの企業だよ。
ともだちにシェアしよう!