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逃げられない③
矢沼が泣き止むまで抱きしめていると、「…そろそろ離れたら?」と湯田に睨まれた。…けど無視してやった、ふん。
矢沼をいじめやがって…!
矢沼が可愛いからっていじめるのはどうかと思う。俺に盗られそうになってヤキモチ妬いたのかな。まったく、ツンデレだな湯田。
「あ。そういえば湯田、この前はジャージありがとう」
思い出したように机の横にかけてある紙袋に目を向けてジャージを返す。
砂埃で汚れてたジャージは洗濯機に回すと簡単に落ちた。よかったよかった。
「ありがとう」
袋の中を覗いてから俺へ視線を向けて、ふわりと…見たことないくらい穏やかに笑みを浮かべられて
すとん、と何かが落ちるような感覚に陥った。
あぁ……、腹減った。
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