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狼狽⑤

「…徹平さん?」 このガヤガヤした空間で、俺のスマホが鳴ったなんて誰も気付かない。 けれど隣のヤツは俺の行動を一部始終、見ていたらしくそう俺に尋ねた。 ……それにしても誰からきたのかも当てるのはすごい。エスパーだ、エスパー。 こくりと頷けば、「返事しないの?」と聞かれ困ったように笑う。 湯田には“過去にする”って言ってしまったのに、こうして逃げて終わりにさせない自分は優柔不断でどうしようもないなと思う。 ……いや、正確には終わったことをまだ引きずっている。 …………はぁ…消してしまおうか。 「シノ」 「…」 「消すなよ、連絡先」 ……何も言ってないじゃんか。エスパー湯田、恐ろしい。 「べつに何も言ってないだろ」 「そんな顔してた」 どんな顔!? なんか全てを見透かされてるような気がして、こわくなってスマホをポケットに戻した。 そして、 「湯田」 「ん?」 「湯田は俺をどうしたいの」 湯田の考えてることが分からなくて先輩のことだけを考えられないのも一理ある。

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