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狼狽⑥

「…どう思う?」 頬杖ついて小さく笑う湯田。 「どうって…」 だって湯田って女の子が好きなんじゃなかったっけ?それなのに、この前のあれは何? あまりに俺が惨めで庇ったとしても、庇い方ってものがあると思うよ、俺は! ただ… 「湯田は俺を庇ったんだよな。あの時はその…ごめん。巻き込むつもり、なかったんだけど……」 湯田も俺と“同じ”だと思われてしまったんじゃないかって罪悪感が拭えない。 「……何に対して今、謝ってる?」 「え?だから…巻き込んじゃったから…それに、湯田は多分あいつらに勘違いされたと思うから」 「勘違いって?」 「湯田が男もその…大丈夫だとか、俺と付き合ってるんじゃないかとか……いてててて」 そこまで言うと、湯田が俺の頬を思いっきりつまんで、それ以上喋ることを阻止された。怒ってる、顔が。 「気にしすぎ。むしろ、もっと頼れ」 「湯田…」 男前だな、おい。 「こら〜〜二人の世界に行かないの〜!」 湯田に見惚れてたら矢沼に怒られた。 矢沼の湯田なのに、ときめいてしまってた、危ない。

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