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第16話

「あーあ、連れ込んじまった」 「つ、連れ込まれちゃった……」 この店から歩いて二十分なんだ、って 以前飲みながら聞いただけで来たのはもちろん初めてだ 単身者用のマンションによくあるように 玄関を入ると短い廊下があって その奥がリビングだった それ自体は俺の部屋よりも狭いけれど引き戸で仕切られてもう一部屋あるから 開け放せばたぶん似たような広さだろう キョロキョロする俺を尻目に 大森さんはいたって普通だ スーツのポケットから携帯や鍵を取り出してテーブルに並べ 力任せにネクタイを緩めている 俺はそれを斜め後ろから眺めていた その俺を大森さんが振り返る 「どーすんだ。知らねぇぞ」 「無責任ですよ!?」 どーすんの!? どうしたらいいの!? 俺は必死に考えたけれど全く策が浮かばない まず、とりあえず、現場把握を 「あ、あの」 「ん?」 「……お腹空きましたね」 「だな。かばん、貸せ」 「あ、あ、はい」 ぶら下げていた通勤バッグを大森さんに手渡す 大森さんはそれを右手で受け取ってすぐそばの椅子に置きながら 左手で空になった俺の手を掴む 「後で、飯な」 「え?はい」 そのまま引き戸の前まで移動して そこで俺をじっと見おろした 「あの」 「ここ、俺の寝室」 軽く握った拳でドアを叩く 寝室って、寝るとこですよね?! いろんな意味で寝るとこですよね?! 顔が熱くなる でも大森さんから目をそらしたくなかった 「俺が決めていいか?」 「な、にを」 「このドアを開けるかどうか」 「大森さん……」 「和弥が決めてもいい」 見慣れた大森さんの微笑みは いつもよりもずっと優しくて困っているみたいに見えた 恋愛に絡むと俺は流されやすくなる でも今は違う 自分でこの人を捕まえたい 俺は何も言わずに勢いよくそのドアを開けた 「……開けちゃいました。どーすんの?」 「俺の理性も限界だよな」 普段と変わらない気がしていた 冷静で頼りになって優しい なのに俺の腕を掴む力は強くて つんのめりそうになりながらベッドに放り投げられた時には さすがに会社の先輩の面影は消えていた 「お前は本当に無防備過ぎる。ホイホイついて来やがって」 「大森さんに備える必要がないもん」 「もう、好きでもないやつについて行くなよ」 「……行きません」 「迷子になっちまうからなぁ。迷子札つけとくか」 「うん」 俺の顔の両側に腕をついて 大森さんがのし掛かって来る ベッドの沈み込み方が半端じゃない 好きな人とエッチするんだ そう考えただけで恥ずかしくて死にそうだった 思わず顔を背けて口元を手で隠す 「どうした?」 「……恥ずかしいです」 「そうか」 大森さんの唇が俺の耳にキスをする それだけで恥ずかしくて嬉しくて どうしていいかわからなくて涙が滲む 「和弥」 「大森さん……俺、大森さんが好きです」 「俺も和弥が好きだよ」 「好きです……好きです」 「こっち向いて言ってくれると嬉しいな」 大きな手で髪を撫でられてそう言われたら 俺だって彼を見つめるしかない 間近にある顔は見慣れたもの 「好きです」 「そうか。俺のこと、好きでいてくれたんだな」 「そう。本当はずっと好きだったんです」 大森さんは俺に優しく微笑みながら頷いてくれた キスしたいな そう思っていたら大森さんの大きな手が俺の頬を包んで 親指が俺の唇をなぞった 「和弥」 「ん……」 大森さんが好き 俺は必死に彼の肩の辺りを掴んで 彼のキスを貪った 優しくて、物足りないほど優しいキス もっと、欲しい 大森さんの手は器用に俺のネクタイを解いて シャツのボタンを外していく ずるっと裾を引っ張り出して ベルトも外してスラックスのジッパーも下ろして あっという間に恥ずかしい格好になる 触って欲しい 触りたい 「和弥……」 「あ、あ」 うつ伏せにさせられて スーツのジャケットと一緒にシャツも脱がされる 下着と一緒にスラックスも引き抜かれて 恥らう暇もなく真っ裸 その俺を背中から抱きしめてくれる大森さんの身体 「ぬ、脱いで、よ」 「ああ。脱いでるよ」 「早く……!」 腕が交互に遠ざかって 両腕でしっかり抱きしめなおされたときには素肌を感じた もう、何がなんだかわからない 密着する下半身も裸 背中越しの身体は想像以上に逞しくて 巻きつく腕も太くて長くて 抱かれている胸の筋肉の張りさえ感じる うなじにキスされて 俺は悲鳴みたいな声をあげた 大森さんは俺の名前を呼びながら背中にキスしてくれて グローブみたいな手が俺のを握りこむ 「ま、って、ちょ……出ちゃう、から……っ」 「いいぞ」 「やだ、あ、だめ……!」 興奮し過ぎて混乱した俺は 数回扱かれただけで白濁を飛ばした 大森さんはそれでもまだゆるゆると俺のを撫でていて もう片方の手が俺の尻を揉んでいる 早く欲しくて俺は腰を揺らした 「ひ……ひっ……!」 「枕抱っこしとけ」 「……ああ!」 縋る思いで大森さんの匂いのする枕にしがみつく 腰だけを高く上げて揺らして 覚えのある感触を双丘の間に受けて そのぬめりを塗りこめるようにしながら大森さんの指が入ってきた 頭でそう理解するよりも先に 身体が勝手に悦んでいた 「あ……あぁ……」 「和弥……こっち向いて」 「お、もりさ」 「キスしたい」 俺の肩に顎を乗せるように覆いかぶさって 大森さんが耳元で囁く 俺は枕を放り出して仰向けになり 彼の首に両腕を回した 俺もいっぱいキスしたい 「おおもりさん、すき」 「俺もだよ、和弥」 「好き……好き」 好きだって言われながら抱かれるのって気持ちいい でも好きだって言いながら抱かれるのはもっといい 俺は大森さんにしがみついて何度も好きだと言った 「身体やらけぇな」 「ん……はい」 何度も甘いキスをして 大森さんの唇が少しずつ下がっていく 首筋 鎖骨 乳首を舐められて吸われて その頃にはアソコの指だって増えていて 隣により沿うように横になって 俺の胸に顔を寄せている大森さんの頭を抱き締めながら 俺はわけもわからずまた達してしまった なんかもう、わけわかんないしっ 「……っは、はぁ……」 「辛くないか?」 「ぜんぜん、ですっ……早く……!」 「我慢しろ」 「や、や……早く、入れて、ください」 「わかったって。ちょっと待て」 「やだ!俺、ゆるいから平気だもん!」 大森さんの指が俺の中をぐちゃぐちゃにしている 全然乱暴じゃないのに溢れる快感は強暴だ 俺は身体を震わせながら 早く繋がりたいと何度もねだった 大森さんは俺をあやす様に優しいキスをくれる 「こんなキツキツのくせに何言ってんだ……我慢しろって。俺だってめちゃめちゃ我慢してんだよ」 顔を覆ったり口元を押さえたり大森さんに抱きついたり 忙しい俺の腕を大森さんが掴むと 自分のに導いた 熱くて硬い陰茎は脈打ち俺の手のひらを塗らす 俺は無我夢中でそれを扱いた 「こら。優しくしろよ……出ちゃうだろうが」 「おーもりさんのばかぁ……!」 「はいはい、ばかです」 大森さん、好きなんです 俺、あなたがずっと好きなんです 俺はうわごとのように繰り返して 大森さんはそのたびに俺もだよ、とキスしてくれた ようやく大森さんが俺に入れてくれて 自分の中をその強い熱がずり上ってくるような感覚 俺は彼のが入ってくる速度で昂ぶっていき 奥まで届いたと同時に意識が飛ぶような感覚を味わった 肌の表面のぼやけた熱と自分の体内の灼熱 逞しい身体が俺を抱き締めてくれる 「和弥……和弥」 「……はぁん……!あぁ……あんっ……!」 舌を絡めて溶けあうようなキスをして 下半身は疑いようもなく深く繋がっていて お互いの腕はお互いを抱き締めている 気持ちいい すごい、気持ちいい 「く……あぁ……出そう」 「俺も、俺も……!イきたいよぉ……!」 一緒にな 大森さんがそう呟いて 俺のを強く扱きはじめる 同じリズムで俺の中を穿つ それがどんどん早くなって 荒かった呼吸を詰めることで快感を増幅させる 俺は両足を彼の腰に巻きつけて グイグイと腰を揺らして彼を奥へ誘いこんだ もっと、中に来て もっと、奥を突いて 「ぅああぁーー……!!」 「んっ……!」 悲鳴なんて可愛いものじゃなくて 獣じみた声に喉を振るわせる 大森さんのが俺の中で跳ねている 言葉もなく吐き出す熱い息だけが部屋にこだましている お互い汗だくで 俺はあまりの快感に口を半分開けて目もとろりと半分閉じていた 顎を伝う唾液を大森さんの舌が舐め取る えろっちいなぁ…… 甘い余韻を分かち合うキス 俺はとうとう好きな人とエッチした

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