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第1話
「声をたてるな」
はじめにそう言われた。
だが、暗がりで着衣をすべてとらされ、手探りでベッドに身を横たえ、
いきなり上に覆いかぶさられたときに、雫(しずく)は思わず
悲鳴のような声をあげてしまった。
「言ったはずだ。声をたてるな。気が散る。」
漆黒の闇のなかで口を閉じれば、自分の心臓の音が聞こえそうだった。
「ひっ。」湿ったあたたかいものが頬をなでた。必死で歯をくいしばった。
首筋、胸、腹。体中を舐め回されているのだとすぐにわかった。肌が粟立つ。
静寂の帳のなかで、ときおり びちゃ、と音をさせながら、まるで生き物のように蠢く舌。
そしてその唾液のあとをなぞるように、今度は指と手のひらが雫の肌を蹂躙していく。
「うっ。」耐えても漏れ出す声。
「堪え性のない子だね。」冷たい声とともに、乱暴に体を裏返された。
背中を同じようにいたぶられたあと、腰骨を両手でぐいっと引き上げられた。
尻をつきだした姿勢にさせられた、と思った瞬間、
「ひあ・・・!」思いもかけない場所を舐め上げられて悲鳴が出た。
「やっ・・・。」
腰を振って逃れようとしたが、意外な力で両腰を押さえつけられている。
「嫌なら暇をやってもいいぞ。」
ほかに行くところがないのを知ってて言ってるのか。
雫は歯をくいしばって抵抗をやめた。
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