1 / 72

第1話

「声をたてるな」 はじめにそう言われた。 だが、暗がりで着衣をすべてとらされ、手探りでベッドに身を横たえ、 いきなり上に覆いかぶさられたときに、雫(しずく)は思わず 悲鳴のような声をあげてしまった。 「言ったはずだ。声をたてるな。気が散る。」 漆黒の闇のなかで口を閉じれば、自分の心臓の音が聞こえそうだった。 「ひっ。」湿ったあたたかいものが頬をなでた。必死で歯をくいしばった。 首筋、胸、腹。体中を舐め回されているのだとすぐにわかった。肌が粟立つ。 静寂の帳のなかで、ときおり びちゃ、と音をさせながら、まるで生き物のように蠢く舌。 そしてその唾液のあとをなぞるように、今度は指と手のひらが雫の肌を蹂躙していく。 「うっ。」耐えても漏れ出す声。 「堪え性のない子だね。」冷たい声とともに、乱暴に体を裏返された。 背中を同じようにいたぶられたあと、腰骨を両手でぐいっと引き上げられた。 尻をつきだした姿勢にさせられた、と思った瞬間、 「ひあ・・・!」思いもかけない場所を舐め上げられて悲鳴が出た。 「やっ・・・。」 腰を振って逃れようとしたが、意外な力で両腰を押さえつけられている。 「嫌なら暇をやってもいいぞ。」 ほかに行くところがないのを知ってて言ってるのか。 雫は歯をくいしばって抵抗をやめた。

ともだちにシェアしよう!