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第二章 両想い

5.伝える    やはりさっきのは本当だったのだ。鷹也が何を言い、断ったのか断ってないのか気になってしまう。 「な、なんて言ったんだ…」  声が震える。 「…それ、和美ちゃんに言ってどうするの」  低い声に、ハッとして鷹也の顔を見つめる。鋭い視線で、睨まれてるみたいだ。 「どうって…鷹也さんが望んでいることを証明できます」 「…何それ、意味分かんね…まぁ、いいや。好きって言われたけど、フッた。これが知りたかったんでしょ」  鷹也の顔がうつむき、表情が見えなくなる。 「俺さ…3年の初めに生徒会に人気投票で指名されて入って、仕事に慣れてきた時に和美ちゃんのこと知ったんだ。顔も知らなかったからどんな子だろうって考えてた時間は嫌いじゃなかった。片思いしてるみたいで、毎日が楽しかった。…な、和美ちゃんと出会うまでが必然だったらどうする?」  必然…?決まってたってことか?それにそんなに前から俺のことを…いつから…いや、これはそういうことが聞きたいんじゃない。 「…だとしても、俺は生徒会に行くことになって貴方のことを深く知れたから必然でも運命でもいいと思ってる」  本心だった。伝えたい。貴方に届く言葉を。 「…和美ちゃん、俺、自惚れちゃうけど、いいの」 「好きに受け取ってくれて構わない」 「はぁー…うん。ちゃんと言ってよ、和美」  言うと決めていたことだ。必ず、伝えなきゃいけない。深く息を吸い、ゆっくり吐き出す。  緊張で心臓が激しく鼓動し、身体全身が波打つようだ。 「最近まで…知らなくていいと思ってた。だから気づくのに遅くなってしまった。正直、気づいたばかりで正解も分からない。貴方と同じだと言うのは気が引けますが…それでも、告白した女子が羨ましかったし、あの人よりも俺の方が貴方を知ってると言いたかった。………貴方が好きです」  とても耐えられる空気ではなく、早く何かを言ってほしかった。嫌な予感がして、鷹也を見ると、ニヤニヤ顔がこちらを見ていた。 「なっ…!俺の精一杯のこ、告白を…貴方、どういう目で見てるんですかっ!」 「あぁ、いや、ごめんって!まさか、予想外の結果で驚いたよ!それ以上に、珍しい光景でしばらく眺めてたのは謝るって!…和美ちゃん、俺のこと好きなんだな。あんなことしたし、嫌われてるかもってマイナスのことしか考えてなかったし…俺、今日、死んでもいい」 「それでは困る。俺に道を外させた責任を貴方にはとって貰わないといけないからな」  鷹也の背中に手を回して抱き寄せる。背も、身体も鷹也の方が大きいのに、今日も可愛く見える。惚れた弱みをもう感じることになるとはな。 「和美ちゃん、こっち来て」  引っ張られて、物陰の裏に隠れるように座り込む。影で少し暗くなり、表情が見えずらくなる。そんな中で服の裾を掴みぐいぐい引いてくる仕草にきゅんとしてしまう。 「和美ちゃん、チューしよ」 「え!?」  思わず、声が大きくなり鷹也に口元をふさがれる。 「しろよ、嫌なの」  何でそんなに喧嘩腰なんだ…。身を乗り出されて、後ろに下がるとその分、寄ってくる。 「わ、分かった…する、から」  あっさり欲に負けて許すと、ガシッと頭を固定されて、むちゅっと押し付けるような色気のないキスをされる。ねだる割にはすぐに離れていき、少し物足りなさを感じる。 「…もういいのか」 「もっとしたい。いい?」  返事を返すのも恥ずかしく、代わりに鷹也にキスを返す。 「和美ちゃんってムッツリだよね。真面目の皮かぶったオス」 「期待外れか?」 「いいや、嬉しい誤算…」  軽いキスを何度も繰り返した後、息継ぎで開いた唇の間をするりと舌が入ってきて、俺のと絡まる。初めてで驚き、逃げ腰になると腰に手を回され、さらに密着する形になる。長く舌を絡め合うと、やがて唾液が口内に溜まってくる。それを鷹也が舌ですくって自分のものにしてしまう。キスがこんなにも気持ちがいいものだったなんて知らなかった。  下半身に熱が溜まりはじめ、俺はバレるのを避けてワザと腰を引くと、回された手がそれを許さず再び密着してしまう。 「だ、ダメだっ…鷹也…それ以上は…」 「んー?」  鷹也は腰をワザと押し付けるようにし、自身の股間を俺のと擦り合わせる。  ビクンと肩が揺れるが、鷹也のも熱を持ってることが分かった。 「どうする?和美ちゃん」 「…何もしないっ、こんな所で…」 「へぇ、ここじゃなかったらいいんだ?和美ちゃんのエッチ」 「…も、もう終わり!昼を食べ損ねるから戻る」  誤魔化すように、立ち上がると物陰から抜け出る。それを鷹也が追いかける。 「和美ちゃん、待って。放課後、生徒会室に来て。待ってる」  そう言って、先に教室に入っていった。  自分も急いで戻り、弁当を食べる。学が俺に気づき、やってくる。 「おかえり。どうだった?何か世界変わった?」 「…変わった…かもな。今回は助かった。学の助言も役に立った」 「なるほど。お礼は自販機のジュースでいいよ」  まぁ、それも致し方ない。助かったのも事実だしな。学は、先程からケータイを見ながらこちらを見ようとしない。人と話をしてる時にケータイとはな…。 「おい、あまり熱中しすぎるなよ」 「…うん…分かってるけど…あのさ、やっぱ、俺の相談乗るってのはどう?」  最近、変だと思っていたが本当に何かあるのか?俺に応えられる相談だといいが。 「うまい応えは期待できないが…いいだろう」  学が話してくれた内容にはおどろかされた。遠まわしに話していたが自分のことだろうと推測する。友達が隠していた趣味が生徒会書記にうっかりバレてしまったという。その趣味をネタにたびたび会えばからかわれたり、脅されているらしい。抵抗してもあまり意味はないらしく、むしろ最近は距離が近くなってきてると。 「…それで?」 「いや、えーと…実はその人と書記は、あってはならない深い関係になってて…それを終わらせたいってその人は思ってる。どうするべきかなって。いいかげん、飽きてくれたらいいのに…」  友達の話と言うわりに、本音がよく出るな…。まさか、学も生徒会と縁があったとは。  しかし、これは…厄介かもしれないな。どんな関係であれ、本人がやめたいと思ってるなら強要されているのかもしれない。 「分かった。俺に任せてくれ」  学の肩に手を置いて、安心させてやる。学には俺が何に納得しているのか分かってないようだった。  その日の放課後、俺は生徒会室に来ていた。

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