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玩具(おもちゃ)に夢中になって、チクニーして、城崎にお仕置きされた数日後。 朝起きるとTシャツの胸元が濡れていることに違和感を持った。 初めはたまたまそこに汗がついてしまったのかとか、そんなことを思っていただけだった。 しかし、夜だけならまだしも、昼間は仕事柄ワイシャツを着るし、脇の汗染みさえ気になるのに胸に染みができるのは恥ずかしくて仕方なく、俺はある方法を思いつく。 ネットで男性用ブラジャーを購入し、ブラジャーが透けないようにインナーを着て、その上にシャツを着るという方法だ。 季節的に暑いがやむを得ない。 「綾人〜……、ってなんかすげぇ暑そうじゃね?」 「いや、うん、まぁ……」 「なんかあった?」 涼真に聞かれ、俺は休憩室に涼真を連れ込み鍵を閉める。 「どうしよう、涼真。俺、乳首だけめちゃくちゃ汗かくようになっちゃった……。」 「は?」 涼真は不審な顔をして俺を見る。 そんな顔で見るな。 俺だって不思議だし、意味わかんねーよ。 「こんなこと城崎に言えない……。」 「で?今どうしてんの?」 「男性用の下着着けて、バレないようにインナー着てる…。」 「だからそんな暑そうな格好してんのかよ。」 冷房が効いてる職場はともかく、営業で外に出ている時が地獄だ。 幸い俺はそこまで汗の匂いが強い体質ではないから、相手に強い不快感は与えていないと思うけど…。 無言になっていると、涼真が俺の乳首を指差して聞いた。 「そもそもさ、それ本当に汗なわけ?」 「は?他に何があるんだよ。」 「母乳……とか?」 「はぁ?!」 「だって乳首だけ濡れるんだろ?いきなりそんなとこだけ汗かくか?」 「いや、男から母乳出る方があり得ないだろ!」 「まぁたしかに……。」 俺の言葉が()に落ちたのか、また無言になった。 あー、クソ……。 胸の締め付け感が慣れない。 というか、蒸れて汗かいて気持ち悪りぃ……。 「うわ、怖っ!!」 「え、何?」 「後ろ!!」 涼真に言われて振り返ると、休憩室の外から城崎が物凄い形相(ぎょうそう)で睨んでいた。 俺は慌ててドアの鍵を開けると、城崎は俺の腕を引き、涼真を睨みつけた。 「何もしてねーって!」 「そりゃこんな周りから見える休憩室で何もできないでしょうね。」 「じゃあ何で怒ってんだよ?」 「先輩と二人きりでいることが不快です!」 城崎はふんっとそっぽ向き、俺を連れて部署へ戻って行った。

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