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「起立。………礼。ありがとうございました。」 「「「ありがとうございました〜」」」 …………? たくさんの高校生たちが礼をして、ばらばらと散っていく。 俺は教壇に立ち、古典の教科書と名簿を持っていた。 「望月先生〜、ここ分かんない。教えて〜?」 「私も〜!」 先生って、俺? チャイムが鳴り休憩時間になったにも関わらず、こうして質問に来てくれる生徒がいるってことは、おそらく俺は生徒の中で人気の部類ではあるのだと思う。 にしても、これ、何? 俺は望月綾人で、Sコーポレーション営業部…のはず。 一体何がどうして教師としてここにいるんだ…? 「先生…?」 「あ、ごめん。どこが分からないの?」 「えっとー、ここと、ここと〜……」 俺の周りに集まる女子生徒はみんな可愛らしい整った顔をしていて、スカートも短くて、健康的な脚が大っぴらに晒されている。 人によっては、胸元のボタンを開けて谷間が見えている子さえいる。 わざと……なのか? 教師として、いや、人として見ないふりをして、生徒からの質問に答えて教室を出る。 名簿の表紙を見ると、今のクラスは3年3組。 パラパラと名簿表を捲ると、3年1組の担任の欄に俺の名前があった。 ヤバい。訳分からん。どうしたらいいんだ? まさか異世界転生?教師に生まれ変わって○○する的な? いやいやいや……、何の徳があるんだよ。 別に飛び抜けて人より勉強ができるわけでもないし。 がっくり項垂れていると、ドンっと肩がぶつかってよろけた。 「すんません。」 気怠そうに俺に謝り、その場を去っていく男子高校生。 俺はその顔を見て思わず声を上げた。 「えっ…!?」 「………?」 「…………」 「なんか俺の顔に付いてます?」 「し、城崎……?」 俺にぶつかった生徒の顔は、どこからどう見ても若かりし頃の城崎だった。 そっか、こんな可愛いんだ。 この頃から身長高いんだ。 声変わりは終わってる。いつも聞く好きな声。 へぇ、そう。あー、そうなんだ。 こんな感じなんだ……。 制服すげぇ似合ってる。 可愛い。格好良い。可愛い……。 「そうですけど、何?まさか自分のクラスの生徒の顔も覚えてないんすか?」 「えっ?!」 「3年1組8番、城崎夏月。担任なんだから、自分のクラスの生徒くらい把握しとけよ。まぁ授業出てない俺が言うのもなんだけど。」 城崎は欠伸をしながらスタスタとどこかへ行ってしまった。 確信した。 これ、夢だ。 いつもの夢オチだって分かってるけど、俺は学生の城崎をもっと見たくて、このまま夢を見続けることにした。

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