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なぜか学校の教室は体が覚えてる。 ご都合主義の夢に感謝しながら、職員室に入ると今の城崎くらい若い先生に囲まれる。 そっか。城崎が高校生だから、俺はまだ23か24そこらなんだ。 鏡を見ると、たしかに20代前半くらいの俺の姿が映っていた。 「はぁ。イケメンはいいですね。生徒にも女性にも好かれて。」 「分かりやすい授業をしても聞いてもらえない我々とは違いますねぇ、羨ましい。」 遠くからでも聞こえるようなボリュームで少し歳のいった男性教師二人に嫌味を言われている。 このへんはご都合主義ではないのか。 人間関係(こじ)れてるなんて、えらく現実味のある夢だな。 「まぁでも、いくらイケメンとはいえ、あの城崎は手懐けられませんか。」 「3年になっても一度も授業に出てないそうで。」 「担任なのに、しっかり教育してほしいですね。」 城崎……、不良なのか。 今の従順な城崎からは考えられない素行(そこう)に、俺は不思議と首を傾げた。 「望月先生、城崎くんのことは気にしちゃダメです!」 「なんて言ったって、あの城崎くんだもん。単位取れる最低限しか授業出ないで有名だしね。なのに成績は学年トップ。すごいよね。」 女教師たちが俺を元気付けようとフォローする。 学生の城崎、評価悪っ…! 「あー……、でも学校来てますよね?授業出ずに何してるんですかね…?」 さっき居たよな。 今日は授業出る日…とか? なんとなく口にした俺の質問は、どうやら聞いてはいけなかったことのようだ。 「あー……、ここだけの話ですよ?生徒に聞いたんですけど、何やら食い漁ってるようで………」 「え?何をですか?」 「男女構わず……、その……、空き教室で………」 小声で教えてもらったのは驚くべき事実。 学生の城崎は学校に来て、授業も受けずに空き教室でヤリまくってるらしい。 夢だと分かっていてもショックだった。 「望月先生、大丈夫?顔、真っ青ですよ…?」 「あ、えっと……、ちょっと授業の準備に行きます…。」 後ろ手で職員室の扉を閉め、早足で国語準備室に向かう。 城崎って、いつからゲイなんだっけ…? 学生の時はまだ女もいけたんだっけ…? というか、これもし城崎の過去をそのまま映してたとしたら、本当に葉月くんのこと言えないじゃん!? ツッコミを入れまくりながら国語準備室の扉を開けると、なぜか鍵が開いていて、ガララッと簡単に開いた。 「あーあ。見つかっちゃった。」 「え、あっ、せ、先生?!城崎くんっ、ま、またね…!」 準備室の中から顔を真っ赤にした可愛らしい男の子が、ほぼ半裸みたいな状態で飛び出していった。 準備室の中に残っているのは、気怠そうに頭を掻いて欠伸をする城崎だった。 噂………、マジだったようだ。

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