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6-2
「っしゃあ〜〜〜!!!全通!!!!」
「おーおー。おめでとう。」
「よかったわね、夏くん。」
当落発表の18時。
俺はAquaで飲んでいた。
麗子ママは俺が喜んでいるのを見て嬉しそうに声をかけ、透さんは興味なさそうに酒を飲んでいた。
「それにしても、全通って全部行くんでしょぉ?お休み取れるの?」
「取れるか取れないかじゃなくて、取るんです。取らせてもらえないなら会社辞めますし。」
「あらぁ〜。」
一年目の時はさすがに怒られた。
首切られるとこだったけど、大企業の営業取ってきて許された。
今年もめちゃくちゃ有休使う代わりに、大手の営業をとるという約束付きだ。
推しのためなら余裕で頑張る。
「あ〜…、綾くんに会える…。マジでヤベェ…。」
「どう見てもこっちのが可愛いだろうが。」
「透さんは分かってないなぁ〜。」
「おまえとは趣味が違ぇんだよ。」
透さんは圭くんを指差してる。
まぁ圭くんは可愛いけど。
でもどう見ても綾くんの方が可愛いもんね?!
「麗子ママはどの子が可愛いと思う〜?」
「ん〜?みんな可愛いわよ?」
「綾くん可愛いよね?」
「そうね。ふふ。」
麗子ママは満遍なく褒めるタイプだ。
参考になんねーな。
「あ。そういえば東京のオーラスだけ2連番申し込んだんだよね。透さん、来ますか?」
「あ?」
「圭くん、生で見れますよ。言っておきますけど、写真と生、全然違いますからね!」
「あっそう。」
「行かないなら他の人にあげます。」
「行かないとは言ってねぇだろが。」
透さんはぶっきらぼうにそう返した。
「素直に行きたいって言えばいいのに。」
「行けたら行く。オペとか入ったら無理だけど。」
「俺は仕事なんかより推しの笑顔を優先します。」
「おまえの事情は知らねぇよ。」
透さんはそんなこと言ってるけど、多分生圭くんを見たいんだと思う。
絶対ハマっちゃうだろうな〜。
綾くんを初めて生で見た時、尊すぎて自然と涙が溢れてきちゃったんだもんな。
「透さんの分も団扇作ってきましょうか?」
「団扇?」
「こーゆーのです!!」
「きめぇ。いらねぇ。」
心を込めて作った俺の団扇は、一言でぶったぎられた。
いいもん。透さんにファンサもらえなくたって知らないもん。
せっかく善意で作ってあげようと思ったのに。
「うふふ。夏くんったら、Sparkleの話になると幼くなるというか、普段とは違って可愛いわねぇ〜♡」
「麗子ママ、馬鹿にしてる?」
「してないわよぉ♡ギャップ萌えよ、ギャップ萌え♡」
むくれていると、麗子ママは俺の好きなお酒をサービスしてくれた。
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