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意識がふわ〜っとする。
目の前が真っ暗で、でも頭に当たる感触は心地いい。
「…き……、城崎…っ」
「っ!」
「あ!気づいたのか?よかったぁ…。」
目を覚ますと、俺は先輩の太腿の上に頭を乗せて眠っていた。
でも、何故か外。見覚えのない景色。
しかも、先輩の格好はなんていうか…。
全体的に白色で清楚。
綺麗…という言葉がよく似合う。
「雪の妖精…?」
「はぁっ?!ちょ…っ、な、何言ってんの!?」
「その格好、何?」
「え?いつもの格好だけど…。ヒーラーなんだから、これが正装だろ。」
ヒーラー……?どういうこと?
いや、でもたしかに先輩の格好は、よくRPGゲームとかで見るヒーラーの格好とよく似てる。
意味が分からなくて自分の格好を確認すると、ゴツゴツした鎧を纏い、近くには大きな剣が置いてあった。
「いや、待って…。どういうこと?」
「まさか記憶喪失…?!」
「ごめん、先輩。まずは状況を説明して…。」
とりあえず夢だということは分かった。
でも十分に夢を楽しむために、まずは状況を理解してから話を進めようと思った。
「今はね、七色の宝珠を取りに行く最中。中級クエストだから、俺と城崎の二人で来たんだよ。城崎はレベル高いから、俺は後ろで回復してれば楽勝だって聞いてさ!」
「ちなみに俺のジョブは…?」
「城崎は王国の騎士団団長だろ?それも忘れちゃったのか?」
「いや…、うん。思い出しました。」
嘘だけど。
へぇ。俺は騎士なんだ。
騎士団団長がヒーラーと何二人旅してんだよって感じだけど、実際俺が守りたい人は望月綾人ただ一人なので、そこはまぁよしとする。
あとはなんだっけ。七色の宝珠を取りに行くんだっけ。
「その宝珠はどこにあるんですか?」
「マップ見てよ。俺が方向音痴だからって馬鹿にしたのおまえだろ?」
「マップの見方教えてよ。」
「仕方ないなぁ。」
先輩はやれやれとでも言いたげに、何もない空間をタッチする。
するとウィンドウが表示された。
「へぇ、すごい。とりあえずクエストはこの洞窟の中みたいです。」
「こんな基本的なことも忘れちゃったのかよ。クエスト一旦中止する?」
「いや、大丈夫。」
すぐに慣れるし。
トントン…と、ウィンドウに何があるのかなどを把握して、ステータス画面を開く。
マジか。
俺は48/50Lvで、先輩は12/50Lvだった。
先輩弱すぎる。
マジで後ろで俺の回復するだけの要員じゃん。
クエストという項目を押すと、受注しているクエストと推奨レベルが表示された。
『七色の宝珠 推奨レベル45』
「先輩、やめませんか?」
「え?なんで?」
「先輩のレベルが低すぎる。」
「はぁ?!俺が守るから大丈夫って言ってたの城崎だろ!現に今まで大丈夫だったし!ほら、行くぞ!」
先輩はレベルを指摘されたのが癇に触ったのか、ぷりぷり怒りながら洞窟の中へ入ってしまった。
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