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SS9-3
綾人さんはこのまま寝たいのかな…。
でもあいつと同じ部屋はやっぱりヤバい。
「嫌がる主任を起こしてまで部屋を移動するなんて、紳士的じゃないですね。」
「誰のせいで…」
「面白いゲームだと思ったんですけどねぇ。じゃあキスでもいいですよ?」
「消えろ。」
「冗談通じないですね〜。」
「本気だろうが。」
「バレました?」
イライラしてきた。
やっぱり移動しよう。
その方が俺も寝れるし…。
綾人さんを抱き上げると、うっすらと目が開く。
「ん…。夏月…?」
「綾人さん、ごめんね。移動するよ。」
「んー……。」
綾人さんは寝ぼけて俺に擦り寄ってくる。
本当に可愛い。可愛いが爆発する。
「じゃあ俺たち、別の部屋行きますから。」
「こんな時間に誰の部屋に行く気ですか?」
「おまえに教えるわけねーだろ。」
部屋を出ると夜風が冷たくて、綾人さんは身震いした。
着ていた羽織を綾人さんに掛けて、長い廊下を歩く。
職場内で頼れる人間なんて、もちろんあの人しかいないんだけど…。
部屋の前に到着し、コンコンとノックすると、しばらくしてから扉が開いた。
眠そうに目を擦りながら現れ、俺たちを見て何か言いたげな顔をする。
「こんばんは。泊めてください。」
「おまえなぁ……。何時だと思ってんだよ?」
「3時。」
「…………理由は明日聞く。とりあえず寒いから入れ。」
「ありがとうございます。」
「みんな寝てるから静かにな。」
柳津さんはため息をついて俺たちを中に入れてくれた。
ここはここでうるさいな、いびきが。
「この布団いいですか?」
「それ俺の布団なんだけど。」
「綾人さんに風邪引けと?」
「なんなの、おまえ…。わかったよ。俺はちゅんちゅんと寝るから。もう寝かせてくれ。」
「ありがとうございます。」
柳津さんは相当眠いらしく、ちゅんちゅんの布団に入っていった。
ものの数秒で柳津さんはちゅんちゅんに布団を奪われていた。
寝相悪いな…。
綾人さんは規則的な寝息を立てて、また気持ちよさそうに眠りについた。
やば…。急に眠くなってきた……。
あいつがいないし俺も寝れるかも……。
綾人さんの寝顔を見ていると、いつのまにか寝落ちてしまった。
長い長い夜だったけど、全部が全部悪くはなかったな。
綾人さんとくっついて寝られたし。
綾人さんと温もりを共有しながら、深い眠りについた。
fin.
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