こんな恋が、自分に降り掛かってくるなんて思いもしてなかった。 　中学2年生の第2性診断でSubと診断されて。ああ、そっかと幼いながらにも納得した。だって、僕の性格がそうだったから。従属的で、引っ込み思案で。誰かに愛されたいと強く願っていたから。 　この世の中の性別には、男女以外の性がある。それを第2の性と呼ぶ。第2の性には2つあって、Dom(支配するもの)、Sub(支配されるもの)がある。DomはSubをコントロールしたい。SubはDomにコントロールされたいと思うのだという。 　Domは、SubのことをCommand(コマンド)という命令を出すことで、支配することが出来る。DomとSubは2人でひとつとなる対の存在。パートナーを見つけられないと、お互い体調を崩すこともあるという。だから、世の中にはDom/Sub結婚相談所などもあったりする。僕は使ったことはないけど。 　その恋に落ちたのは、僕が28歳のときの梅雨だった。雨は、昔から嫌いではなかった。この季節に出会えたのも、神様の思し召しかもしれない。そう思ってしまうくらいに、僕の人生には何もなかった。