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第25話
「ごめんね」
「え」
相良さんがしおらしく言う。視線は下に落ちていて、表情は真剣で。
「とっさにglareが出てしまったみたいだ。雛瀬くんに辛い思いをさせて、ごめん」
そう言って、僕のほうを見る。瞳の奥がゆらゆらと彷徨うように動いている。迷子の子どもみたいな顔。僕はそんな顔をさせたくなくて、口走る。
「相良さんのせいじゃありませんよ。僕が……ああいう奴らに目をつけられてしまうから」
「違うよ」
ぴしゃり、と言いつけられて肩が揺れた。相良さん怒ってる? 相良さんは眉間に指を当てると、はぁと小さくため息をついた。
「ごめん。今も、怖かったよね。俺は雛瀬くんは悪くないと思うから。ああいうDomが許せないだけなんだ」
ふう、と短く息を吐くと相良さんは僕の包帯に触れる。大丈夫? とそう問いかけてくるような心配そうな視線。優しいんだな……。
「長居するといけないから帰ります」
そう言って、相良さんの手を振りほどく。この近さは、なんとなく良くない気がする。
「だめだ。今夜は泊まっていって」
「……悪いですよ。それに、たいした怪我じゃないし」
「だめだよ。雛瀬くん。俺の言うことききなさい」
ぞわ、と鳥肌がたつ。無意識なのか意図的なのかわからないけど、相良さんのglareが漏れ出ている。僕は爛々と光る瞳からそそくさと目を離した。だめだ。帰してくれそうにない。
「シャワー浴びてきていいよ。着替えは俺のを使って」
「ありがとう、ございます」
相良さんに言われるがまま、バスルームへ連れていかれる。ドアを閉めようとしたら、その手を止められた。……何?
「その手じゃ洗えないでしょ」
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