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第26話

「えっと……た、だいじょ、うぶですから」  相良さんの言葉の意味がわかり、羞恥でしどろもどろになる。相良さんはいたって真剣な顔で僕を見る。 「俺がやらないと気が済まないから。ね、お願い」  また、目が……怖い。僕はかたかたと震えながら自分のシャツの袖を掴む。その様子を見ていた相良さんは、苦笑する。 「ごめん……無意識にglareが出てしまうみたいだ。雛瀬くんを怯えさせたくないのにね」  そう言って自嘲的に笑うから。僕はふるふると首を横に振る。 「相良さんは悪くないですよ」 「じゃあ、あとは俺に任せて」 「……はい。お願いします」  ぱちぱち。シャツのボタンが外されていく音。シーリングライトの白い光の中で僕は裸にされていく。相良さんと違って健康的じゃないから……白い肌は貧相に見えるし、薄い腹なんて男らしくもない。ずっと、この体型がコンプレックスだった。名前も女らしくて、体も女の子っぽくて。もっと、逞しい身体に生まれてみたかった。そうすれば、野球とか、ラグビーとか楽しいスポーツを思いっきりできるのに。……相良さんみたいなかっこいい大人に、なれるのに。  最後はボクサーパンツ1枚だけ。僕は足をもじもじとして、落ち着かない。そんな僕を見て、相良さんがくす、と笑うから。どうして? とその顔を仰ぎ見た。 「大丈夫。俺は紳士的なんだよ」  ほんとかな。弧を描く瞳。僕は少しだけ安心できた。真っ直ぐ立って、目線は相良さんの胸板を向いて。する、と足元から離れていく布。文字通り、僕は丸裸になった。相良さんは、僕の裸を見ても特に何も言わない。それに、ほっとした。男同士だし、別に変じゃないよね。温泉だって、男同士裸で入るんだし。これは相良さんの介抱のひとつなんだから。変な気になる必要は無い。

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