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第96話 甘く、溶かされて。

「いらっしゃいませーって、優希じゃん」  都内でも有名らしいその美容院は、店員さんの見た目も芸能人みたいにおしゃれで。挨拶をしてくれた店員さんは、白いTシャツに現代アート風のデザインが入ったものを着ている。パンツは白と黒のチェック柄。下北沢とかの若者がよく着る服の雰囲気に似ている。髪の毛は金髪にパーマをかけている。その毛先は薄い紫色に染まっていた。 「志麻《しま》。久しぶり」  今日は相良さんが予約してくれた美容院にやってきた。お店の名前は「be lol」英語で、「笑って」という意味らしい。お客様を笑顔でお送りするのがお店のコンセプトだという。美容室は20畳くらいの広さで、天井も高く開放的な空間が広がっている。2階にはカフェが併設されているらしく、スイーツが映えると有名で、1階の美容院にもお客さんがよく来るのだという。天井には、フープ型の飾りがついていて、なんだか理系の教授が持っている実験室みたいだ。  相良さんに志麻と呼ばれた男の美容師さんが僕のもとに歩いてきた。口端を上げて僕に目を向けてくる。 「はじめまして。be lol の副店長をしています。志麻 智哉《しま ともちか》といいます。今日はご来店頂きありがとうございます。雛瀬様の期待に応えられるようにスタイリングさせていただきます」 「よっ、よろしくお願いします」

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