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第293話 《番外編》希望の光へ To the Light of Hope

 愛おしい時間とはなぜこんなにも速く過ぎ去っていくのだろう。  隣にいることが当たり前になってしまったから?  いつまでも与えられる愛に無意識に甘えてしまうから?  これは自分の向き合い方の問題なのか、はたまた長く付き合うカップルに付き物と呼ばれるマンネリ化というのか。  僕はシアトルの| Pioneer Square《パイオニア・スクエア》に店先を構える路地裏のカフェで物思いに耽っていた。  午後の光がゆったりと目の前に見える赤レンガの建物を染め、石畳の通りは金色に輝いていた。  2階のテラス席には静かな風が舞い込んで足元をするりと駆け抜け逃げていく。その冷たさはまるで秋風に混じる冬の知らせのようだった。  2階のカフェテラスの目の前には、レンガ造りの街並みが一望できた。視界の奥には、19世紀末に建てられたレンガ造りのビルが並び、古い街灯が静かに影を落としている。ここはシアトルのパイオニア・スクエア。開拓者たちがこの地に根を下ろしてから、すでに百年以上の時が流れている場所だった。  シアトルにはこんなに綺麗な景色が広がっているんだ。  心の中でつぶやきながら、僕は手元のホットココアの入ったカップを握りしめる。ミルクでラテアートが施されており、店員さんが気前よく猫の顔を描いてくれた。ラテアートを見るのは初めてではなかったが、こんなに精巧な猫を描いてもらえたことが嬉しく、このカフェがすぐにお気に入りになった。  カフェの外席に漂う店内からのコーヒーの香りが、風に乗って鼻腔をくすぐる。テラスの柵に手を添え、遠くの海に視線を投げると、エリオット湾の水面が午後の光を反射して煌めいた。  この地区はかつて、木材の匂いと港の喧騒に満ちた街だった。白人の開拓者たちがこの土地に初めて足を踏み入れ、製材所を築き、街を整えていった。  だが、1889年の大火で街のほとんどは焼き尽くされた。レンガと石で再建された街は、それでも昔日の記憶をそっと抱き続けている。僕はレンガの壁に刻まれた年月の跡を想像しながら、目の前の通りをゆっくりと見渡す。

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