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第297話 恋人というよりペット扱いされてる? 仲直りはキスにして

 ちょうどその出来事以降からだ。僕と優希さんがセックスをしなくなったのは。  同棲して半年間は、数日に1回はそういうムードになってお互いの愛を伝えあったはずなのに。  優希さんは僕に痛いplayはしなくなった代わりに、以前より増して甘やかしてくれるようになった。それが素直に嬉しくなって見えないしっぽをぶんぶん振っていたのが良くなかったのだろうか。  そういう雰囲気になるのは決まって優希さんから「する?」とか「おいで」とか言われる時であって、僕からあからさまに誘うことは少なかった。でも、たまに勇気を出して自分から手を繋いでみたり、ぎゅっと背中を抱きしめてみたり、アクションはしていたと思う。  けれど、優希さんはテレビのニュースを見ながら「よしよし」と僕の頭を撫でるだけで満足してしまいそのまま寝落ちしてしまうことも増えた。  まるで僕は恋人というよりも、優希さんに飼われているペットみたいだ。  そんなふてくされた気持ちのままだから、それとなく誘われても気乗りしなかった。そんな僕の空気を感じ取ったのか、それ以降セックスはしていない。もう3ヶ月近くしていない。これは危機だと思う。  だからこそ、僕らは今、ひとつの佳境に陥っているのだと思う。なんとかしてマンネリを解消したい。セックスレスも解消したい。  だから僕は、今夜こそ……!  そう強く拳を握りしめて優希さんの帰りを待った。 ◇◇◇ 「ただいま」 「……おかえりなさい」  時刻は午後9時過ぎ。やっと優希さんが帰ってきた。残業だったみたい。優希さんから荷物を受け取って寝室へ誘う。 「シャワー浴びてくるね」 「うん」  優希さんがシャワーを浴びている間に、夕食の支度を進める。今日は一緒にご飯を食べた後、夜のお誘いをするつもりだ。だから僕は、先にシャワーを浴びてある。気合いは十分だ。 「うわ。おいしい」 「よかったです」  今日はひじきの煮物、ちくわチーズ揚げ、ナスと豆腐の味噌汁に、雑穀ごはん。  ヘルシーでたんぱく質も豊富だ。身体作りは食べ物から。そんな思考がシアトルに移り住んでからひしひしと感じるようになった。甘すぎるシリアルは毎日食べるのには胃がもたれてしまう。 「ごちそうさま。今日もおいしかったよ。ありがとう」 「どういたしまして」  夕食を終え、寝室で過ごすひととき。  スマホでウェブ新聞を読んでいる優希さんの横にぴとっとくっついてみる。すると、優希さんが自然と僕の肩に腕をまわした。 「どうしたの?」 「あ、の。今日は、久しぶりにしたいなって……」  口の中がカラカラだ。僕が勇気を振り絞って誘うと、優希さんはぽかんとしてこちらを見つめてくる。  なんか、変な誘い方しちゃったかな……?  もじもじと手足を動かしていると、ふわりと身体が包まれた。 「待ってたよ。李子が誘ってくれるの」 「ふぇ?」 「俺から無理やり襲いたくないし。なにより、俺も求められたい」 「だから、最近レスだったんですか?」  混乱する僕に優希さんは優しく諭すように頬を撫でてくれる。 「レスって思わせてたならごめん。仕事が忙しくて疲れていたのは本音だし、李子も仕事を再開してそっちに集中してほしかったから俺からは誘わないようにしてたんだ」 「そんな……僕、優希さんの気遣いに気づけなくて一人で悩んじゃって」 「ごめんね。俺は李子のペースに合わせるつもりだったけど、物足りなかったのかも」 「……そうかも、しれない」  よしよし、と優希さんが大きな手のひらで僕の頭を撫でてくれた。きゅっと胸が甘く締め付けられる。 「じゃあ今日からはお互い誘い合おうね。それと……今夜は我慢できそうにない。こんなに俺を求めてくれる李子がかわいくて仕方ない」 「……うん。よかった。僕ももっともっと優希さんのこと好きになりました」  指にキスされて、額にキスされて、唇にふにっとした感触。  ああ。この人とのキスは僕をひどく安心させてくれる。 「愛してるよ。李子」 「うん。僕も、優希さんのこと愛してる」  そんなこんなで僕らのマンネリとセックスレスは無事に解消されたのでした。 ─おしまい─

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