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おまけ
◇◇
「……う、うごけない」
「風呂なら入れてやるぞ」
「うっ、大浴場……」
はだけた胸には歯形と赤黒い鬱血が残されている。こんな卑猥な身体は公共の場に晒せない。
「その姿だと無理だな」
「……いじわる」
「どっちが」
「……冷血感」
あれほど欲しいとお願いしたのに、どうしてか責めたくなってしまう。身体が、節々が、痛くて動かない。ギシギシと軋んで頭から足先まで筋肉痛だ。頭は澄み渡るほとスッキリ爽快で、こうなるのはわかっていたけどちょっと困ってほしい。胃の負担も考えて、しばらくは豪奢な食事をあきらめて粥生活だ。
「はいはい、ぜんぶ俺が悪いよ。ほら、オレンジジュースでも飲め」
慶斗はぐったりした俺にキスをした。重なった唇からさっぱりとしたジュースが注がれる。あの日からあまいあまい世話をほどこされている。明後日にチェックアウトする予定だ。
「……んっ」
「嫌いなら、今日はしないぞ」
「……する。たっぷり相手してもらいます」
腕を組んで、むすっとしてみせた。
「かわいいやつめ」
かぶさった唇に、オレンジの味が濃くなる。
今日も今日とて、愛が満ちて溢れる。
神さま、幸せはつづいております。
おわり
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