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最終話
「なか、熱い」
「んっ、もう、はいる。はいるから、許して、ねぇ、もうほしい。けいとお……っ」
「だめだ」
「や。やだ。けいとの欲しい、ほしいよぉ。……あついのちょうだい。ふとくて、ながいの、ほしい。いれて」
「もっと柔らかくなるまでやる」
収縮するようなうねりを起こしながら、二本の指をなかが巻きつける。足りなくて、切なくなり、涙が止まらない。溢れる涙の粒を吸われても、もっともっとというふうに自ら腰を振る。
「ほしい、もっと……もっとふといので、奥えぐってェッ……」
つんつん……と焦らすように腹でつついて、べとべとになりながら俺は全身でねだる。しがみついて、がむしゃらに唇を押しつける。
「……ほら、開いてきたぞ」
「ああああ、イッ……いい、……アッ、アッ」
「もう少し我慢してくれ」
二本の指が根元まで挿し込まれ、指の動きをはやめながら糸がほどいたようにひろげられる。喉に絡まったようなかすれた声が飛び、物足りない甘さにつま先がぴんと張る。
「はっ、んっ……、ほし、けいとお、ほしい、もうだいじょ、ぶ、だいじょぶだから、いれて」
耳たぶを噛んで、泣き声に似た声を番いに流し込む。
発情期のときはいつもこうだ。ねだって、ぐちゃぐちゃになった自分をめちゃくちゃに壊してほしい。
もっともっとと欲して、涙してねだっても、許してくれない。それでも慶斗を求めてしまう。まるで淫乱みたいだ。求めてもやすやすとくれない番いに許しを乞う。
「……っ」
「けいとお……」
「動けなくなるぞ」
「う、ん……、それでもいい……ッ」
「……くそッ、なんでもこうもかわいいんだよ」
涙を吸い取った慶斗が苦い顔をした。羽織っていた浴衣を剥ぎ取るように脱ぎ、腰を持ち上げられる。濡れて熱を帯びた先端が、黒い茂みから見えた。青筋立った凶器が、ゆっくりと押しひろげるように薄い膜に脈打ちながら挿入される。
「あっ、あっ、きもち、いい……いく、いくいく」
触れなくても血管のでこぼこがわかる。とくとくとしたものが、中で満ちた。深く挿しこみ、それだけでぴくぴくと達してしまう。
「ずいぶんと熱いな」
「……んっ、もっと、もっとほしい」
熱塊が半分まで埋まり、それから根元まで呑みこまれ、全身に小刻みに痙攣が走る。震えが止まらない。
「……はいったぞ」
「すごい……、けいとの、……すごい…硬い」
ペニスからはたらたらと鈴口から先走りの露がにじみ出て、涎を垂らし、だらしない姿で尖った肉を食いしめる自分がいた。
「褒められると恥ずかしいな」
「んっ、んあっ、ばか」
「知ってる」
揺さぶられる。根元から先端を締めつけるように、その熱さを味わう。意識なんてぶっ飛んでいるのに、全身が熱棒につよくからみついて、粘膜が悦んでいるのがわかる。
「……七海、愛している」
「お、おれも、……あいしている。すき、すきだ。だいすき……ひゃっ」
「かわいい」
「あっ、……んっ」
ねっとりと吸いつく舌の動きが、ぴちゃぴちゃと淫らに音を立て、慶斗は両下肢を割ってもっと奥までぐいと埋ずめ込んだ。
「すこし、動くぞ」
「えっ……、あっ、あっ、あっ……ッ」
ぐいぐいと深みを突き穿ち、俺はのしかかった腰に両脚を巻きつけて深く交じろうと迎え入れる。
「……ッ」
「……ゃっ、あっ、あついあついの、おくに、あついの、ちょうだい」
「奥も突いてやるよ」
浅くつつかれ、足首を持ち上げられる。ぐっしょりと濡れそぼり、限界までひろがる接合部が見えた。
「えっ…、あっ」
「きつかったら、言ってくれ」
互いの唇を重ねて、抜けていく感覚がしたと思った途端、ずるりと肉竿が抜け、一気に硬い肉で深いところまで突かれた。
「ああーッ、あああああーっ……ゃ、あっ」
腰を掴んで、狂おしいほど腰をゆすられ、ぴゅっぴゅっと潮を噴いていた。制御できないほどの喜悦のうめきが溢れて洩れ、背中に爪を立ててわななく。
「……まだ出てるな」
「あ、そこ、おく、おくおくいっちゃう……んあっ」
「ここ、好きだろう」
ぴったりと合わさった場所の窪みをこじ開ける。合わせ目が開き、電気にでも打たれたようにふるえがとまらない。
「いっ、あ!」
「ここだな」
「あっ、ま、また、また、あ、あ、あ、あーあー……」
腰の高さをあげられ、さらに深く穿たれた。つつかれるたびに大きな絶頂を迎え、真っ白な光景に身を投げ捨てて、上下に体が揺れ動く。
ぷしゅっと透明な液体が柔らかくなった芯柱からも噴き出して止まない。
えぐるように種を擦りつけられ、額から汗が落ちている慶斗が愛しくてしょうがない。爪痕を刻みながら、しがみついて離さない俺がいる。
「まだ足りない」
「ああっ……、イク、イク、イクっ」
「……っ、のまれそうだ」
「んっ、けいとも、けい、もいって、いっしょにいって、……んぁ」
「……殺し文句だな」
「おれのでいって、いって……んぁっ、けい、けい、けい……っ」
「…………わかった」
頭を抱きかかえるように抱きしめられ、深く突いた。奥深くにどくどくと熱が放たれる。気が遠くなりそうなほどの鮮烈な快感が押し寄せ、眼差しが宙をういて見えた。下腹部から灼熱した精液がじわじわとひろがる。
「んっ、んんっ」
唇をはまれ、頭の中がじいんと白くなった。それでも内側から噴き出す熱をかんじる。びゅびゅうっと押すように白い欲望が吐き出される。
「やっぱり俺のほうがお前より気持ちが重いんだ。愛しているのに、足りない。壊してしまいそうだ」
ぶるぶると震え、それでも止まらない絶頂を迎えながらそんな言葉が聞こえる。
「……こわしていいよ」
「ばか」
「ん、……すき」
「俺は愛してる」
「おれも……あいしてる」
あまい声が絡んで、ふっと通り過ぎた。好き過ぎて、また欲しくなる。そんなこわい気持ちに襲われ、もう一度速まる律動に俺は酔いしれた。
手を差し伸べるときつく抱きしめられ、慶斗と俺は悦びを交わして灼熱の精を放ち続けた。
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