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前奏 ~ 汝の教へられたる事の慥なるを悟らせん
あれほど地面を熱く照りつけていた太陽が、今まさに遠くの山の陰に落ちようとしている。
マンションの屋上に吹く風には、少しばかりの冷たさが混じっていて、それが何も身に着けていないボクの肌をかすめていった。
夏なのに? なぜ?
でも、その答えはもう、ボクには必要ないもの。
黄昏に沈む街には、光点が星のように散りばめられている。
光あふれる楽園。でもその光は、エデンを追われた者には相応しくないよね。
でも、一人で先に出ていくなんてずるいよ。約束が違うじゃん。
だから、逃がさないよ、マタイ。
追いかけるから。
……地獄まで。
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