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「すき……、好きだ……。――よしき」  愛おしさで身体中が満たされて、生きてきて一番幸せだと思った。  世界中のどんな言葉を使ってもこの幸福はきっと伝えきれない。込み上げてくる想いは言葉の代わりに雫となって、凌の頬を濡らしていく。  幼子のように顔をくしゃくしゃにして泣いてしまった凌に、嘉貴はひとつ瞬いて、それから面映ゆそうに破顔した。 「そんなかわいく泣かないで。……俺まで泣いちゃいそう」  掠れた声が、囁いた。 「俺も好きだよ、凌。多分、お前が思ってるよりもずっと」  顔を寄せて、あやすようにキスをされる。  足りなくて、もっととねだるように今度は凌から唇を重ねた。  熱い舌を絡め合い、口内を余すことなく味わい尽くされる。隙間なく塞がれて、息苦しくてもやめたくなかった。離れたくないと凌の望むとおりに与えられる濃厚な口づけに夢中になっていると、繋がっている箇所をゆっくりと揺すられた。 「は、ぁ……ん、あっ……」  いつしか緊張もほどけ、嘉貴の熱に馴染んだ後孔が物足りなさそうにひくりと収縮する。  懐くような内壁の動きに情欲を煽られて、嘉貴も徐々にその律動を速めていく。 「んっ、あっ、あっ、んん、ああっ……」  口づけをほどいて、それでも少しでも近くに嘉貴を感じたくてしがみつくように背中に腕を回す。伸ばした手が触れた広い背中は薄らと汗ばんでいて彼も興奮しているんだと肌で感じた。  一生知ることはないと思っていた体温の心地良さに陶然としていると、ぐ、と内側を抉る角度が変わった。 「あっ! あっ、そ、そこ……だめっ、あぁっ!」  先ほど指で執拗なくらいに教えられた快楽の熱源を擦られ、全身が甘く痙攣する。  そこを中心に、やがて凌の隘路全体が蕩けていく。浅いところも、深いところも、どこを穿たれても気持ち良くてたまらなくて、喘ぐ声を止められない。 「気持ちいい?」 「や、やっ、だめ、ぁあっ、おかしく、な……っ、やぁ……っ!」 「凌……」 「ああっ!」  柔く噛まれたのは凌の無防備な耳朶だった。  いやらしい音でねろりと耳の中まで嬲った嘉貴が、愛おしそうに「凌」ともう一度囁いた。 「教えて……、凌の口から聞かせて?」  見上げた先、官能に歪む表情が扇情的で、腹の奥がぞくぞくする。  いつもならこんなこと躊躇するに決まっているのに、理性が焼き切れている凌は意地の悪いお願いにひくりと喉を鳴らしてしまった。 「い、いい……っ、気持ちいい……あ、あぁ……っ!」  口にしたら、後孔が狭まった気がした。それとも、嘉貴の昂ぶりが質量を増したのか。あるいは両方か。  どれが正解かなんて分からないけれど、膨れあがった快楽にふたりして酔いしれる。  身体の奥が歓んでいる。もっともっととはしたなくねだるぬかるみを、望み通りに硬い先端で抉られる。  強く腰を引き寄せられたかと思うとふたりの間でしとどに濡れていた性器を最初より少し荒い手つきで追い詰められて、内腿が震えた。 「よしっ、よしきっ、あ……っ、く……イく……っ!」 「りょう……っ」  絶頂の瞬間、どちらからともなくキスをする。息ができないくらい、深い口づけ。抱き締めて、ぐぅ、と己の存在を刻み込むように最後にもう一度内側全体を擦られて、甘い痺れにまた涙がこぼれた。

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