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「っは……、嘉貴……」 「ん?」 「も、もっと……」 「……うん?」  快楽から解放された身体がゆっくりと弛緩していく。次いで襲いかかる心地のいい疲労感に、溶けてしまいそうな思考を必死で繋ぎ止める。 「もっとして……こんなんじゃ足りねぇ。もっと……まだ、終わりたくない」  どうしようもない多幸感にもっと浸かっていたかった。  どこもかしこも蕩けるほどに抱き合って、キスをして、好きだと飽きるくらい言いたいし、言って欲しい。  熱に浮かされたままの瞳で訴えれば、僅かに、まだ凌の最奥に埋められたままの性器が芯を持ち始めた気がした。 「……だーめ」 「んっ……」  一瞬目を眇め、けれど大きく深呼吸をして息を整えた嘉貴が慎重に凌の中から出ていく。 「何で……気持ち良くなかった……?」 「あんだけ猿みたいに盛ってた相手によく言えるね? 初めてで無茶させたくない俺の鋼の心を褒めてよ」 「あともう一回くらいならいけるし……」  不満を隠すことなく口を尖らせると、咎めるように柔く下唇を食まれた。 「今にも寝そうな顔で何言ってんだよ。昨日とか、不安で眠れなかったんだろ?」  それは間違いなく図星で、思わず凌は押し黙ってしまう。嘉貴相手にバレバレなことくらい予想ついたが、それでも今は睡眠欲より性欲な気分なのに。 「大丈夫だよ、これから嫌ってくらいえっちなこともしていくんだから。本当に、嫌ってくらい。嫌って言われても止めないくらい」 「そこは止めろよ……」  凌の好きな低い声が、子守歌のように耳を擽る。どんなに頑張って瞬きをしても徐々に重たくなっていく瞼を止められずにいると、ついに大きな掌に優しく光を遮られた。 「先は長いんだから、ゆっくりいこうよ。――ふたりでさ」  そう言って、まどろむ凌の額に口づけをひとつ。情事でぐしゃぐしゃに乱れた髪に鼻先を埋めた嘉貴が夢見心地に微笑んだ。 「おやすみ、凌」

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