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第3話

 1ー3 『通販』  奥様の本名は、ナカガワ・アカネというのだが、俺は、奥様と呼ばしていただいている。  というのも、この方がこの辺境伯の王都での別宅の主であるからだ。  なぜ、婚約者である奥様が辺境伯のお屋敷ではなく別宅におられるのか、というといろいろな事情があった。  奥様は、この世界に来て一年ほどの『渡り人』だ。  なんでも、この世界に来て見ず知らずの地で途方にくれておられたところをたまたま通りかかってしまった辺境伯の嫡男である宮廷魔導師であるハツ・クルベニア様が拾ってしまわれ、そのままとんとん拍子に婚約者となられたのだとか。  本当に、お気の毒なことだと思う。  それは、俺だけの見解ではない。  ハツ様と奥様を知る全ての人が納得する意見だった。  いわく、  「ハツ様は、できた方だが奥方選びには失敗した」  というのも、奥様は、希代の問題児だったからだ。  この世界に来たばかりの頃、大人しく健気に振る舞われていた奥様だったが、時が経つにつれその本性を現してきて、今では、辺境伯の王都の屋敷を追い出されてこの町外れの古い館にたった一人で暮らされているのだった。  最初は、身の回りのお世話をするために何人もの使用人たちがいたらしいのだが、みな、奥様の扱いに困り去っていったのだという。  そのためにわざわざ冒険者ギルドの職員である俺が世話役に任命されたのだと気づいた頃には、もう遅かった。  いつの間にか、奥様に関する全てが俺に任されることになってしまっていた。  それでも、逃げることもできるのだ。  だが、俺が逃げ出さないのは、ただ、この世界にいきなり放り出された奥様に同情しているからということがあったからだ。  奥様は、この世界に来た当初は、王城にて暮らしていた。  しかし、徐々に本性を見せ始めた奥様を王ももて余しだした。  そんなときにハツ様が婚約を申し込まれたのだった。  渡りに船とはこのことだ。  王は喜んで、奥様をハツ様のもとへと送り出した。  だが、奥様の『通販』とやらは、止むことなく辺境伯の屋敷の奥様の部屋は、謎の器具やら、なんやらで足の踏み場もなかったらしい。

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