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第7話
1ー7 それは、愛なのだから
結局、俺が奥様を連れて王城へと向かったのは、その日の昼からになった。
王城へ行くとなると、やはりいろいろ準備というものがある。
奥様は、いつも灰色のじゃーじというものを身に付けて過ごされているのだが、王族の御前へいくとなればきちんとしたドレス姿でなくてはならない。
俺がそう伝えると、奥様は、ちっと舌打ちされた。
「ややこしい」
それから、奥様は、『通販』でドレス一式と靴をお買い求めになられたのだが、なかなか身支度に時間がかかった。
なにしろ女物の衣装に詳しくない俺とこの世界の衣装に不馴れな奥様しかいないのだからな。
なんとか、ドレスを着せ終わって王城へと出発した俺に奥様は言い放った。
「ティル、あなた、童貞?」
「いえ、一応、違います」
俺は、御者を勤めながら奥様の質問に答えた。すると、奥様がすごく生暖かい目で俺を見た。
「そうなんだ。てっきり、ティルは、男が好きなんだとばかり思っていた」
はいぃっ?
あまりの誤解に俺が言葉を失っていると、奥様がにっこりと微笑まれた。
「いいのよ、ティル。人には、秘密があるものなんだから」
「い、いえ、そんな秘密はありません!」
俺が言い張ると、奥様は、うんうん、と頷いた。
「そういうことにしといてあげる」
「いや、そういうこと、ではなく、本当に、俺は、女が好きなんですよ?」
俺が言うのに、奥様は、まったく信じてくれない。
俺は、冷や汗が流れていた。
もしかして、奥様は、俺がテオに魔力を与えているのを見て勘違いされたのではないか?
まあ、ちょっと気持ちがよくなるのは
確かなんだが、決して俺は、男が好きなわけではない。
魔力の譲渡は、依存性のある行為だ。
与える方も、与えられる方も心地よくなってしまうのだ。
だが、断じて俺は、男が好きとかではなかった。
そんなこと、この43年の人生で初めて言われましたよ。
ほんとに。
俺があわあわなっているのを見て、奥様はにっこりと微笑まれた。
「恥ずかしがらなくってもいいのよ、ティル」
奥様は、聖女のごとき微笑みを浮かべて俺に告げた。
「男が男を愛しても、なんの罪にもなるわけではない。それは、愛なのだから」
なんですと?
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