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第29話

 3ー1 チート  俺たちが王都へと戻ってはや1ヶ月が過ぎた。  王都では、魔王軍の侵攻にともない戦いの準備に追われていた。  王命により聖女と魔導師の捜索がなされていたが、いまだに2人の行方は掴めなかった。  よほど、箝口令を敷いているのに違いなかった。  勇者は、聖女たちが戻ることはないと諦めているようだった。  勇者は、新しいパーティーのメンバーを募集していた。  だが、それは、また別の話だ。  俺と奥様には、ほぼ関係なかった。  あれから、奥様は、少し変化があった。  なんと、奥様は、家庭教師に魔法を  習い始めた。  奥様の魔法の先生を勤めるのは現役の魔導ギルドに所属する魔導師のミミルさんだった。  ミミルさんいわく、奥様は、もともと魔力量は、ある方なのでかなり将来有望だということだった。  いわゆるチートというやつらしい。  まあ、『通販』だけでもかなりのチートだがな。  たった今も訓練中に大魔法を爆裂させている。  庭の半分を吹き飛ばすその魔法の威力を目にしてミミル先生は、衝撃にぐったりしてテラスの椅子に座り込んだ。  「冗談じゃないわ、こんなでたらめな」  「わかります」   俺は、ミミル先生にお茶の入ったカップを差し出した。  「どうぞ、モモのフレーバーティーです。ヨウナシのタルトもありますよ」  俺は、奥様に教えられた通りの呪文のような名前を唱えていた。  なんでも、奥様がいうには、有名なカフェのお茶とケーキなのらしい。   「『通販』かぁ」  ミミル先生の淡い緑の瞳がきらん、と輝いた。  先生は、この練習の合間のお茶の時間を楽しみにしていた。特に、奥様方用意する異世界の変わったお菓子をな。  「ほわぁ、いい香り」  ミミル先生は、うっとりとしてお茶の香りを味わってからお茶を一口飲んだ。  「美味しい!」  「ヨウナシのタルトもどうぞ」  俺が切り分けたケーキを差し出すとミミル先生はふわぁっと満面の笑顔になった。  奥様は、テオの差し出したタオルで汗を拭きながら冷たい果実水を一気に飲み干した。  「ぷはぁっ、この一杯のために生きてる!」  俺たちは、2人がお茶をしている間に辺りの片付けをすませることにした。  奥様のけた違いの魔法で形を変えてしまった庭を整えたり、壊れたものを直したりと忙しい。  いつもなら、もっと手早くすませられるのだが、なんか、最近は、体調が悪くってな。  やっぱ、年なのかな。

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