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第40話

 3ー12 懐かしの我が家  「このカナンの村は、貧しくって税を領主様に滞納しているからね。せめて、こういうときには、人を出さなくてはならないって、父さんが」  なるほど。  俺は、納得して頷いた。  「それで、マイルズが留守だったんだな」  「うん」  サナがこくりと頷いた。  「父さんがいれば、きっとすごく喜んだんだけど。父さんのとこに毎月、いくらかのお金を送ってくれてたの、ティル兄ちゃんだろ?」  「なんのことだ?」  俺は、とぼけた。  俺は、村を出てからずっとマイルズに小銭を送金していた。  それは、俺からのマイルズへのお礼のつもりだった。  誰も引き取り手のいなかった俺を自分の子のように育ててくれたマイルズへのちょっとした恩返しだ。  「ところで、ティル兄ちゃん、この人たちは、誰なの?」  サナは、奥様たちを指して訊ねた。  「もしかしてティル兄ちゃんの奥さん?」  「そんなわけがねぇし!」  俺が言うと同時に奥様も弁解した。  「私は、今、ティルを雇っている者よ。いろいろあって、ティルと一緒にしばらく村でスローライフを送ろうと思ってるから、よろしくね」  「すろーらいふ?」  サナが困ったような顔をした。  「そんなものうちの村にあるかな」  「大丈夫です」  ミミル先生がサナに答えた。  「ただ、しばらく我々が滞在できる家を貸してほしいのですが」  「それなら、ちょうどいい家があるよ」  サナは、俺たちを村のはずれにある小さな丸太小屋へと案内した。  「これは」  俺は、その家の前で立ち尽くした。  この家は。  「そう。ここは、ティル兄ちゃんの家だよ」  ここは、俺が生まれた家だった。  とっくの昔に失われたものと思っていたのに。  言葉を失っている俺にサナが告げた。  「父さんがいつか兄ちゃんが帰ってくるときのためにって手入れしてたんだ。ここを使えばいいよ」  俺たちは、マイルズたちの好意に感謝した。  家の中も、時々、みんなが掃除してくれていたらしくって清潔で埃もほとんどない。  俺は、胸がいっぱいになっていた。  昔、家族と暮らした家でまた、暮らせるなんて。  

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