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第42話

 4ー1 離さない!   俺たちは、俺の家のリビングで全員集まっていた。  なぜか、俺は、あの銀髪の魔族の膝の上に横座りに座らされていた。  別に好きでこうしているわけではない。  決して違う。  俺は、顔から火の出るぐらい恥ずかしかったが抵抗できずにいた。  なぜか、この男には逆らえない。  たぶん、そういう魔法をかけられているのに違いなかった。  今、俺の全身にはあのときと同じ番紋が浮き出ていた。  この魔族の男は、俺の番紋をみなに見せつけるために俺を裸のままつれ回そうとしたが、それは、さすがにやめてくれと頼んで服を着させてもらった。  だが、男は、俺には下履きしか与えてくれなかった。  「これでも譲歩している。本来、番紋の出ている番には、服など着せないものだ」  マジですか?  奥様とミミル先生は、知らない魔族に抱き抱えられた俺をガン見している。  テオは、横で牙を向いているが、俺が止めているのでなんとか飛びかかってくるのをこらえている様だった。  キュウはというと、この男の背におぶさって嬉しげにきゅうっと鳴いていた。  どうやら、生まれてすぐに見たからか、懐いているようだった。  リビングには、妙に緊迫した空気が流れていて、俺たちは、誰も口を閉ざしていた。  息詰まる様な時間が過ぎた。  「で?あなたは、うちのティルをどうしたいのかしら?」  唐突に、奥様が魔族に問いかけた。  魔族の男は、愉快げに口許を歪めた。  「さっき言った通りだ。連れ帰って妃にする」  妃?  俺は、ぎょっとしていた。  魔族の中に連れ戻されるのも、監禁されるのも、もう嫌だ!  奥様は、俺の方を見て訊ねた、  「ティルは、どうしたいの?」  「俺は」  俺は、この魔族が恐ろしかった。  なにしろ魔王軍の幹部らしい男だ。  それに、あの一昼夜のことが体に刻まれているしな。  とにかく、もう、離してほしかった。  「下ろしてほしいんだが」  俺は、なんとか掠れた声で言った。  が、魔族の男は、一言呻いた。  「ダメだ」  なんでっ?  俺が視線で問いかけると男は、答えた。  「こいつは、一度、私のもとから逃げ出した。二度とは逃すわけにはいかん」  

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