47 / 110
第47話
4ー6 全部、俺のせい?
「で?」
俺は、厳しい口調で奥様たちを尋問していた。
「いったい、何をたくらんでいるんですか?」
「企んでいるってほどじゃないし」
奥様が答えたので俺は、がぅっと吠えた。
「企んでなくってなんでこんなことになってるんですか!」
「それは、私から説明した方がいいかも」
ミミル先生が立ち上がった。
「あなたに相談なしですすめたことは悪かったわ、ごめんなさいね、ティル。実は、私たち、ここで事業を起こそうと思っているのよ」
「事業?」
「そう」
奥様が口を挟んだ。
「この世界で『通販』を始めようと思ってるのよ、私たち」
なんですと?
奥様たちは、俺に説明した。
「私たちは、ちょっと前から考えていたのよ。このすばらしい『通販』を世界中のすべての人たちと分かち合えないものかと」
「そのためにはまず、通信システムの構築が必要だったの。でも、それもガイの協力でなんとかなりそうだし」
奥様がガイを見ると、ガイは、頷いた。
「ああ。我々魔族とて、好きで人と争っているわけではない。和平への可能性を模索することはやぶさかではない」
「というわけで、ここ、ティルの誕生の地にて私たちは、『通販』会社を立ち上げることにしました」
ミミル先生がにこやかに宣言した。
こうして、魔王と『渡り人』とカナンの村との共同事業が始められることとなった。
「最初は、王都に限って運営してみようとおもっているんだけど」
奥様が話した。
「このミミル先生の紹介で腕のいい魔道具製作者も見つかったし。ガイの協力で通信網もなんとかなりそうだし。後は、客なんだけど」
「それは、自分が協力するっす」
扉が開いて、勇者が現れた。
「自分が築いてきた王族とのコネをつかって広めていくっすよ」
「なんで、勇者様がここに?」
「いや、アカネに招かれたから」
「魔族の軍団のことは?」
俺がきくと、勇者は朗らかに答えた。
「いや、この度、停戦条約を結ぶことになったんすよ」
はい?
俺は、唖然としていた。
いったい、いつの間に、何が起こってこんなことに?
「すべては、ティルのおかげよ」
奥様がにっこりと微笑んだ。
「この和平も、新事業も、ね」
ともだちにシェアしよう!