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第49話
4ー8 すべての魔族の番
ガイは、俺たちに魔王軍の進軍の秘密を話し始めた。
「魔族は、常にその拠り所となる場所を必要としている。猫が家につくと人が言うように、魔族も魔王城につく」
ガイが言うには、魔王城というのは、象徴なのだという。
「魔族たちの思いが集結してできるのが魔王城だ」
魔族が生きていくためには、魔王城が絶対に必要だった。
それは、魔族の核となるものだった。
「だが、魔王城は、数百年ごとにその姿を失ってしまうのだ」
それは、魔王城の運命なのだ。
魔王城は、1人の魔族を核としていた。
その核となる者の周囲を他の魔族たちの思念で包み込み成り立つ。
それが魔王城の秘密だった。
「魔王城の核となる者は、数百年に一度現れるはずだった」
ガイは、続けた。
「だが、現状では、まだ魔王城の核となる者は、現れてはいない。それ故に、我々は、魔王城を失い彷徨っていた。だが」
ガイが俺をじっと見つめた。
「我々は、ついに核となる人物を見つけることができた」
「それが、お前だ、ティル」
「ほぇっ!?」
俺は、驚いて思わず変な声を出してしまった。
「なんで、俺?」
「私にも、なぜ、魔王城の核となる者がお前のような人間なのか、わからない」
ガイは、俺を蕩ける様な眼差しで見つめていた。
「だが、伝説によれば魔王城の核となる者は、愛の女神の加護を受けし者だという。そして、彼の者は、全ての魔族たちの番となる」
ガイは、俺の頬へと手を伸ばしてそっと触れた。
「お前のように、な」
「いや、俺は」
俺は、ガイの手を払うと 告げた。
「お前たちの番なんかじゃねぇし」
「とにかく!」
奥様がぴしゃっと言い放った。
「魔王城の核となる者であるあなたが私たちの計画には必要なのよ、ティル」
なんでも魔族には、独特な通信網があるのだという。
遠くはなれていても、理解しあえる能力。
「それは、魔王城を中心として成り立つ能力だ」
ガイが俺説明した。
「そして、それこそが魔族が魔王城を必要とする理由でもある」
ガイは、俺の目をまっすぐに見詰めた。
「我々は魔族は、魔王城によってお互いを補完しあうことによって存在している。もしも、これが長期間失われれば、魔族は狂乱し、世界は、本当に滅ぶだろう」
俺は、青い瞳に魅せられていた。
美しい空の青。
ガイは、俺の手を握ると囁いた。
「どうか、ティルよ、魔族のために、いや、この世界のために我々、すべての魔族の番となってはくれないか?」
なんですと?
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