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第51話

 4ー10 魔石  俺は、仕方なく、本当に、仕方なく魔王城の核となることを受け入れることにした。  「世界の平和のために、仕方なく受け入れよう」  「ティル!」  魔王が俺を抱き締める。  「本当に感謝する、ティルよ」  「だからって、お前たちを受け入れるってわけじゃないからな!」  俺は、ガイを押し離した。  「俺は、あくまでみんなのために引き受けるだけだからな!」  「これで、魔族の問題は解決されるし、私たちの計画も次に進められるってことね」  奥様が満足そうに微笑む。  「ミミル先生、さっそく、魔道具製作者と連絡をとって」  「わかったわ」  ミミル先生が頷いた。  「例のものも届けなくちゃいけないしね」  「例のもの?」  俺は、ミミル先生に訊ねた。  ミミル先生は、露骨にしまったという顔をして奥様の方を見た。奥様は、ちょっとだけ困った顔をしていた。  「実は、『通販』のために必要な魔道具を作るために大量の魔石がいるのよ」  「マジですか?」  魔石は、大変貴重なものだ。  魔物や魔族が体内に持つ魔石は、いろいろな魔道具に使われている。  その入手方法は、魔物の討伐が主なものだった。  だから、魔石は、主に冒険者ギルドで取り扱われていた。  冒険者が魔物討伐やらで手に入れた魔石は、冒険者ギルドで売り買いされ、魔道具製作者がそれを用いていろいろな魔道具を製作していた。  魔道具は、我々の生活に欠かせない便利な道具だったが、万人が手に入れることができるわけではない。   だが、魔力の弱い者や、まれにいる魔力を使えない者のためには重要な道具だった。  「『通販』には、このタブレットのような道具が必要なんだけど、それを作るためには魔石が欠かせないの。でも、そんな大量の魔石は、なかなか手にいれられるものではないわ」  ミミル先生が話した。  「でも、その問題も解決したわ」  「どうやって?」  俺は、奥様たちに訊ねた。  「そんなもの、どうやって手に入れるんです?」  「それは」  奥様がさらっとおっしゃった。  「魔族からの提供を受けることによって解決したわ」  魔族からの提供?  俺は、驚いて魔王を見上げた。  魔王は、特に表情も変えることなく答えた。  「確かに、魔石は、我々が提供すると約束した」  マジですか?  俺は、驚愕を隠せない。  だって、魔石って魔族や魔物の体内にある貴重なものですよ?  魔族がなぜ、奥様ごときのためにそこまで身を削らないといけないわけ?

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