５ー１　世界の中心ですか？ 　カナンの村に初雪が降る頃、俺は、魔王城の中心である玉座の間でこたつに入って蜜柑を食っていた。 　このこたつというのは、奥様が俺のために『通販』で購入してくれたものだった。 　動力源はよくわからないが、中に熱を発するものがあって、それのまわりをふかふかの布団で覆ってそこに足を突っ込んでいると、とても暖かくって満ち足りた気分になる。 　しかも、この蜜柑。 　俺は、なぜか、最近、酸っぱいものが食べたくなってきていた。 　奥様がそんな俺のために蜜柑を買ってくれたのだった。 　これが、すごくおいしくって。 　俺は、ずっとこたつに入って蜜柑を食べてすごしていた。 　「はぁ、ほんと、これは、人間をダメにする道具っすね」 　勇者様が俺の正面に足をつっこんでため息を漏らした。 　今、魔王とその側近たちは、魔王城を留守にしていた。 　テオは、奥様の手伝いを頼まれているし、キュウも出払っていた。 　奥様たちも忙しいらしい。 　なんでも、今度、このカナンの村で祭りをするらしい。 　俺は、興味もなかったが奥様たちの始めた事業が成功したうえに、大量の魔族が流入してきてこのカナンの村は、今、かつてないほどの繁栄の時を迎えていた。 　俺がこの村から逃げようとして奥様たちに阻止された後、俺は、魔族の儀式によって魔王城の核として据えられることになった。 　といっても、俺を中心として魔族の持つ魔力が魔王城を形作るというだけで、俺は、何も実際はすることがない。 　だが、俺に何かあれば魔王城は、その姿を保てなくなるらしいので、魔族たちは俺を下にも置かないぐらい大切にあつかってくれていた。 　そのうえ、魔族たちは、勇者様を俺の守護として雇っていた。 　なんで、魔族が勇者様を？ 　当然の疑問がわくが、そこは、魔族の忖度らしい。 　人間の俺のためには、魔族よりも同じ人間の守護がいた方がいいだろうということらしい。 　俺は、今、この世界のすべての魔族の番として、彼らと繋がっている。 　そして、世界中の魔族と繋がっている俺を利用して奥様たちは、『通販』の事業を開始していた。