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第55話
4ー14 制圧
「テオ、気持ちは嬉しいけど、お前を連れて行くことはできないよ」
俺は、テオを抱き締めた。
暖かな陽だまりの匂いがした。
テオは、俺のことを抱きかえすと、俺の耳元で囁いた。
「魔王は、ここに魔族の中心である魔王城を築くつもりだ。すでに、他の魔族への知らせは出されている。夜明けになれば、この村には、魔族が群れをなして押し寄せることだろう。そうなれば、お前は、もう逃げることはできなくなる」
マジですか?
テオは、続けた。
「俺なら、お前を連れて遠くまで逃れることができる」
「テオ・・」
俺の心は、もう、決まっていた。
子供の頃から俺が魔力を与えて育ててきたんだ。
いろいろ無体なことをされたこともあったけど、それでも、俺は、こいつがかわいい。
俺は、テオを俺のために同族たちと戦わせることはできない。
「俺は、お前を連れていくことはできないよ」
「なんで?」
テオは、小さかった頃のように駄々をこねた。
「お前は、弱い。その上今は、身重の体だ。旅をするのも1人ではかなわないだろう。それなのに、なぜ、俺を連れていかない?」
「それは」
俺がいいかけた時に、俺たちの周囲の空気が変わるのがわかった。
「何?2人でなんの相談をしてるの?こんな夜中に」
「お、奥様?」
俺は、背後を振り向いた。
そこには、酒瓶をぶら下げた酔っぱらいたちの姿があった。
赤い顔をした勇者ががしっとテオを羽交い締めした。
「だめっすよ、抜け駆けは」
「は、放せ!」
暴れるテオを勇者は、なんなくホールドしていた。
さすが、勇者だけのことはある。
「往生際が悪いですよ、ティル」
ミミル先生がにんまりと笑った。
「あなたには、これからの世界のために身を呈して働いてもらわなくてはならないんですからね」
マジですか?
突然、背後から腕を掴まれて、俺は、抱き寄せられた。
「まだ、逃げようとするのか?ティル」
魔王が俺を強く抱き締めた。
「もっと体に教え込まなくてはならないらしいな」
はい?
魔王は俺を抱き上げるとすたすたと俺の家へと向かって歩き抱した。
「いやっ!ちょっと、待って!マジで、下ろせ!」
俺は、抵抗したが魔王は、身じろぎもしなかった。
連れていかれる俺を奥様たちは、生暖かい目で見守っていた。
家へと連れ戻された俺は、それから3日間、太陽を見ることはなかった。
というのも、俺は、それからずっと魔王に抱かれ続けていたから。
普通に考えて、途中で俺が意識を失って終わりそうなものだが、魔王は、俺が気を失いかける度にミミル先生から貰ったというポーションを俺に口移しで飲ませてくるので、その度に、俺は、回復してしまい、終わりなく抱かれ続けることとなった。
いっても、いっても、先が見えない快楽の中で俺は、声をあげ続けていた。
「も・・やめっ!なんでも、いうとおり、するからぁっ!」
いつしか俺は、懇願していた。
だが、魔王は、俺を抱くことを止めようとはしなかった。
そして。
やっと、俺が解放されたときには、村は、魔王軍によって制圧されていたのだった。
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