５ー６　できてた！ 　「うん、やっぱ、これよね！」 　ミミル先生がスプーンを手に微笑みを浮かべた。 　「それで？」 　ミミル先生は、生クリームをスプーンですくって口に運びながら俺に訊ねた。 　「ティルは、２人をどうしたいの？」 　「俺ですか？」 　俺は、少し考え込んだ。 　俺は、あの２人をどうしたいのか？ 　 ２人とも、俺は、嫌いじゃない。 　婚約破棄されて、婚約者に逃げられた過去を共有している２人には、幸せになって欲しい。 　特に、奥様には、な。 　世話のかかる奥様と頼りない勇者様だったが、２人ともいい人なんだよ、これが。 　確かに、奥様は、いつも無駄遣いばかりしているし、酒飲みだし、普段は、ジャージ姿でうろうろしてるし、部屋には、『通販』で買った品が山積みになってるし、しかも、ベッドの下には、その、男同士の艶本が山ほど隠されているし。 　俺は、本の内容を思い出して顔が火照ってくるのを感じていた。 　とにかく！ 　そんな難ばかりの奥様だが、時々、かわいいこともあるんだよ！ 　勇者様だって、そうだ。 　このジストニア王国で一番人気の独身男であり、魔王と匹敵するとまで言われている実力の持ち主のくせに、実は、ロリコンで優柔不断だし。 　俺は、そんな２人に幸せになって欲しかった。 　後。 　「俺は、もう奥様が泣くところを見たくない」 　俺の言葉にミミル先生も頷いた。 　「そうね、アカネにも幸せになってほしいわね」 　うん。 　俺は、はっと気づいた。 　アカネにも？ 　俺は、なにげにミミル先生の方を見ると、先生は、うっすらと頬を赤らめていた。 　んん？ 　なぜか、気のせいかもしれないが、サナまで、赤くなってる？ 　ええっ？ 　俺は、２人を交互に見ながら、ぐるぅっと頭を回転させていた。 　はいぃっ？ 　俺は、思わず、叫んだ。 　「なんですとぉっ？」 　「いや、ティル兄ちゃんに内緒にしてるつもりはなかったんだけど、実は、俺たち、こういうことになっちゃって」 　サナがてれてれで、ちらっとミミル先生を窺いながら話し出した。 　「なんか、いろいろ手伝っているうちに、素敵な人だなと思うようになって」 　「私も」 　ミミル先生がもじもじとしながら続けた。 　「なんか、今まで周囲にいないタイプの男だなと思ってるうちにこんな関係になってしまって」 　俺は、呆然としていちゃついている二人のことを見つめていた。