64 / 110
第64話
5ー9 目撃!
据え膳食わぬはなんとやら。
俺は、そのままソファでサリュウさんのことを押し倒すともう一度訊ねた。
「ほんとに、いいんですか?」
「もちろんです」
サリュウさんが俺の首へと腕をまわしてきた。
「私だって、あなたの番の内の1人なんですからね」
そう言うとサリュウさんは、俺のことを引き寄せて唇を重ねた。
暖かくって、柔らかいサリュウさんに抱き締められて、俺は、快さにうっとりとしていた。
俺もキスを返す。
甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。
俺は、久しぶりの、というか、初めての女の人に気が高ぶっていた。
俺は、夢中でサリュウさんのことを貪った。
俺たちは、しばらくお互いを求めあってから唇を離した。
サリュウさんがぽぅっと頬を染めて俺を見上げて、囁いた。
「まさか、私が番の情けを受けられるとは思っていませんでした」
なんでも、ガイの許可なく俺に手を出すことはできないが、俺がそれを望むなら可能なのだそうだ。
「そうなのか?」
俺は、そっとサリュウさんの存在感のある胸へと手を触れた。
サリュウさんは、ふるっと体を震わせた。
「あっ、そ、その、あなたは、魔王様のことを愛していると思っていたので」
はい?
俺は、手を止めた。
俺が、ガイを愛してる?
「そんなわけが」
「だって、あなたは、あんなにも魔王様に愛されているから、だから、てっきり他の番たちには、関心がないのかと」
俺は、サリュウさんの唇を口づけで封じた。
俺がガイに愛されている?
俺は、頭を振った。
そんなわけがない。
ガイは、若くて美しい。
それに引き換え、俺は、ただのおっさんに過ぎない。
こんな俺をガイが愛するわけがない。
俺は、そっとサリュウさんの服を脱がそうとした。
そのとき、サリュウさんが小声で呟いた。
「ああっ、まさか、あなたに初めてを捧げられるなんて」
はい?
俺は、思わずきいていた。
「初めて?」
「はい。私は、今まで誰にもこの身を任せたことはありません」
マジですか?
俺は、服を脱がせるのをやめて体を離した。
サリュウさんが不安げに俺を見つめているのに、俺は、優しく微笑みかけた。
「もう、いいよ。ありがとう」
「なんで?」
サリュウさんが涙ぐんで俺に問いかけた。
「私、何か、気にさわることをしましたか?」
「いや」
俺は、サリュウさんを慰めるように肩に手を置いた。
「君みたいな娘の初めてを俺なんかが奪っていいわけがない」
「そんな!」
サリュウさんが泣きながら俺に抱きついてきた。
「私、私、ほんとに、あなたのことが」
「サリュウさん」
俺は、サリュウさんをそっと抱き締めた。
「嬉しいけど、俺みたいなおっさんじゃなく、もっと君に相応しい男がいる。もっと、自分を大事にしてくれ」
「でもっ!」
サリュウさんは、俺の胸にすがって涙を流した。
俺は、サリュウさんの柔らかな金の髪を撫でていた。
そのとき、部屋の扉が開いて。
入ってきたのは、ガイだった。
「何をしている?」
地獄の底から響いてくるような低い声でガイが訊ねる。
慌ててサリュウさんが体を離すと涙を拭い、服を直しながら立ち上がり、ガイ横をすり抜けて駆け去っていった。
俺は。
ガイに冷たい目を向けられて、ひきつった笑顔を浮かべていた。
ともだちにシェアしよう!