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第68話
5ー13 清める
どこかで水音が響いた。
それと時を同じくして何か、冷たいものが額に押し当てられ俺は、その心地よさに思わず口許を緩ませた。
うん。
火照った体にひんやりとして気持ちがいい。
ゆっくりと目を開くと、ぼやけた焦点が徐々にあってくる。
俺は、ベッドに裸で横たえていて、そのすぐ横にテオが腰かけていた。
「・・テオ?」
テオは、無言のまま枕元のテーブルに置かれた桶の水でゆすいで絞った布で俺の体を拭ってくれていた。
俺が慌てて体を起こそうとするのをテオは、とどめた。
「じっとしてろよ、ティル」
「でも」
俺が言うことをきかずに体を起こそうとするのを不機嫌そうに見つめて、テオは、怒鳴った。
「じっとしてろって言ってるだろうが!」
「でも、な」
俺が発しようとした言葉をテオは、口づけで封じた。
テオは、己の舌で俺の舌を絡めとり甘く噛んだ。
「ふぁっ!」
俺は、びくっと体を跳ねさせていた。だが、テオはかまわず俺の口中を貪り、その唾液を送り込んできた。
俺は、涙目になってそれを拒もうとしたが、テオは、俺が奴の唾液を飲み込むまで俺を離そうとはしなかった。
仕方がなく、俺は、ごくんっとテオの流し込んできた唾液を飲み下した。
うん?
なんだか、体の奥からぽかぽかしてきて、俺は、低く呻き声を上げた。
なんだ、これ?
ガイに抱き潰されて意識を失っていた俺は、身体中が行為の生々しい痕を残している。
噛みつかれたり、吸われたりして赤く花びらのように散らされた俺の肌をテオは、丁寧に優しく湿った布で吹き清めていく。
そのくすぐったいような心地よさに俺は、素直に身を委ねていた。
「フィオルの体液は、番の弱った体を回復させる」
テオは、なおも俺の唇を奪い、俺に己の体液を飲ませようとしたので、俺は、それを拒もうとした。
が、俺の快楽に慣らされてしまった肉体は、テオのことを受け入れたがっていた。
「て、お」
俺は、テオの口づけを拒むことができなかった。
テオは、そんな俺にキスを与えた。
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