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第96話

 8ー1 アイシテル  俺がこちらの世界にきてはや半年の時が過ぎていた。  シロアたちは、俺と子供たちを丁重に扱ってくれていた。  獣人の子供たちの成長は、はやい。  俺は、それをテオを育てたから知っていたけど、日々、大きくなっていく子供たちに驚きを感じていた。  子供たちは、もう人間の3才児ぐらいには成長していた。  かわいい盛りの子供たちを父親であるテオとガイに見せられないことが俺は、悲しかった。  俺は、今ももとの世界に帰ることを諦めてはいなかった。  シロアの言うことには、2つの世界は、魔王城を挟んで存在しているのだという。  つまり、魔王城は、どちらの世界にも存在しているわけだった。  俺は、なんとか、ガイたちに連絡をとりたくて魔王城の俺の部屋の壁に言葉を刻んでみた。  『子供ウマレタ。イマモ、アイシテル』  俺は、夜な夜な部屋の壁に愛を刻んだ。  もちろんシロアたちには、内緒である。  俺は、夜中の誰もこない時間帯を選んで自室の壁に文字を刻み続けた。  『アイシテル』  今夜も、俺は、そう刻んでいた。  この言葉は、朝になるまでには消える。  魔王城は、己の傷を自分で修復してしまうのだ。  『アイシテル』  俺がそう刻んでいると背後からシロアが俺のナイフを握った手を掴んで止めた。  「無駄なことは、もう、やめろ、ティル」  シロアは、俺を背後からぎゅっと抱き締めた。  「そんなこと続けても誰も気づくわけがない」  「でも!」  俺がそう言ったとき、壁に文字が浮かび上がった。  『ワレワレモ、ティルヲアイスル』  俺は、思わず声をあげていた。  「やっぱり!繋がってるんだ!この城で向こうの世界と!」  俺が歓喜の声をあげるのを見て、シロアは、悲しげな表情を浮かべた。  そして、シロアは、手をかざすとその文字を消した。  「シロア?」  「何度言えばいいんだ?お前は、私のもの、だ」  シロアは、抱き上げて俺をベッドへと運ぶとそこに押し倒した。  「お前は、私のものだ」  シロアは、俺にキスをした。  「なぜ、私のものにならない?」  「だって」  俺は答えた。  「俺の心は、ここにはないから」  俺は、シロアが嫌いじゃない。  シロアは、俺をこちらの世界に 連れ去ってきた。  すべての元凶だ。  それでも、シロアを憎むことは俺にはできなかった。  

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