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第1話
とあるアニメの収録スタジオ。主役と悪役の2人が休憩室で揉めていた。
「おい、千景。お前また俺の電話番号教えただろ」
電話がはいり少し部屋から出ていた彼を見たら振り返らずにはいられないほどのネコ顔の金茶の髪。瞳は青色のイケメンが、中でスマホをいじっていた狐面を被っている桜色の髪に肌が浅黒い彼を怒鳴りつけた。
「あれ。ごめんよ。カイ。自分の電話番号を覚えていなくて咄嗟にね」
「咄嗟にじゃねぇ。また知らねぇ女から電話がかかってきた」
「カイ。顔と口調と、声音が合ってないよ」
「てめぇにだけは言われたくねぇな。てめぇの顔を見た若手俳優が漏らしたって聞いたぞ」
「ああそれは僕が顔を洗っていたら、たまたま入って来て、悪いことをしてしまったよ」
ガチャ。スタッフが2人を呼びに来た。2人は声優として人気はある。業界でもかなり有名だ。
武藤カイ。26歳。振り返らずにはいられないネコ顔イケメン。その声はハスキーボイスでツッコミ体質の不良声優。元ボディーガード。
新堂千景。24歳。強面の顔。千景の顔を見た人は誰もが怯えて話せなくなったり、トラウマになったりする。その声は爽やかテノール。性格紳士な天然王子様系声優。元闇医者。
顔と声音、口調が合ってないことで有名なのだ。今回の仕事も主役の王子様が千景。カイが悪役魔王。
「脚本。誰が書いたのかな。これ」
「まさか、てめぇまた」
「さっき読んだ。でも嫌いじゃない。探偵王子。僕は好きだな。外と中から国を変える男。いつもの甘いマスクの王子役じゃないのがいい」
「俺も同意。悪役って立ち位置だけど、本当は悪役じゃない。王子の協力者で魔界と人間界を繋ぐために手を汚す魔王」
「だけど、カイ。これ主役も魔王も死ぬ。それだけはどうかと思うよ。愛し合っていた2人は幸せにはなったが、それは天国で残念な話だ。しかも君とBLをやるなんて」
「おれもだ。おれも2人が死ぬ必要はなかったと思うぜ。しかしなお前とBL。おれ。断ったんだぜ」
「ん。何故今ここに居るのですか?」
「プロデューサーに土下座されたんだよ。お前の顔。大丈夫なのがおれだけだから頼むってな。千景は何で引き受けた」
「お金ですよ。ギャラ。良かったので」
話をしているうちに、収録部屋に着いた。いざ本番という時。大きな揺れが2人を襲う。周りからも悲鳴が聞こえた。
「千景。なんでもいい。頭を守れ。下手に動くな」
「心得ました」
台本しか持っていなかった2人は頭を台本で隠して、揺れがおさまるのを待った。
数分後。揺れがおさまり、2人は立ち上がる。
「千景。平気か」
「問題ない。しかし、目の前を見たまえ」
「目の前ってマジか」
千景とカイの目の前に花壇に突き刺さっている人間の足が見えた。
「人間の限界に挑んだと考えていいのかな。カイ」
「アホか。どんだけ力あるんだよ。ゴリラか。人間を花みたいに植えられるわけないだろ」
「植える。カイ。人間はふっ、植物ではないよ」
「例えだ例え」
「それに大声で話していたら」
誰か来てしまうよと言おうとした千景。時すでに遅し。見慣れない重そうな甲冑を着た騎士に囲まれて、2人は連行された。
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