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腐男子とヤクザの組長の出会い

妹の茉弓(まゆみ)の腐女子歴は二十年以上だ。 当時はまだBLというジャンルは確立されていなかった。やおい、JUNEと呼ばれていた。今流行りのオメガバースやもふもふや異世界トラップやファンタジーなどない。どちらかといえば極道モノや刑事モノなどの硬派なジャンルが流行っていたと思う。 茉弓は友だちとアニメのキャラクター同士をくっつけておおいに盛り上がっていた。俺もそんな茉弓の影響で男同士の恋愛を描いた小説や漫画を読むようになっていた。ようは腐男子だった。 高校の入学式の時、恐れを知らぬ茉弓は同じクラスになった縣信孝に友だちになろうと自分から声を掛けた。 信孝の実家の縣一家は東日本で最大の勢力を誇る昇龍会の一次団体。つまり直参だった。俺が極道モノばかり好き好んで読んでいること知っている茉弓は何を考えたのか突拍子もない行動に出たのだ。 「ちょっと待て茉弓」 むんずと袖を掴まれ信孝のところに連れていかれた。 「信孝くん、さっき話していた私のお兄ちゃんです」 「縣信孝です。俺もその手の話しを読んだことあるよ。じゃあ仲間だ。宜しく。えっと……」 「鬼頭光希だ。普通科の二年生です」 信孝は俺が腐男子だと知ってもまったく驚かなかった。 信孝は中学校を卒業後、自由を求め、たったひとりで福島に移住した。アルバイトで生計を立てながら一人暮らしをはじめた。 「本音をいうと知り合いがいない福島で一人でやっていけるか不安だったんだ。だから、茉弓さんに声を掛けてもらって嬉しかった。同じ趣味の仲間にも会えたし最高の気持ちで高校生活をスタートすることが出来た。ありがとう」 信孝は嬉しくてたまらない、そんな様子だった。 「(こん)だ」 俳優顔負けの、見る者を圧倒する華やかな顔。けれども纏う空気は冷たくて。近寄りがたいオーラを放っていた。ぼうっとして見惚れていたら、くすりと笑われてしまった。 「強面で厳ついオッサンを予想していただろう?期待に添えなくて申し訳ない」 「いえ、そんなことないです」 顔を真っ赤にし首を横に振ったら、 「なかなか面白い子だな。気に入った」 頭をぽんぽんと撫でられた。 当時は昆と名乗っていた男性。彼こそのちの縣遼成。俺の夫になる人だ。彼との出会いはまさに運命そのものだった。

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