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第11話
「じゃあ、お兄ちゃん先に帰るね」
「ひとりで大丈夫?」
「うん。細貝さんと有原さんが福島まで付いていってくれるから鬼に金棒だよ」
茉弓は男の俺から見ても自分より強いかもと思うほど肝っ玉が据わっている。後輩には姉貴と呼ばれ慕われ、先輩からも好感を持たれていて友だちが多い。
俺にしがみついて離れようとしない龍。
いまだ茉弓にライバル心をめらめらと燃やし威嚇している。
「お兄ちゃんも大変だね」
茉弓がクスクスと笑った。
朝から龍がこんな感じで俺にべったりで。全然離してくれなくて、一泊だけ帰るつもりがお盆休み中、遼のマンションに滞在することになってしまった。
「ねぇ龍成くん、頼むから十八日から部活がはじまるからそれまでにちゃんとお兄ちゃんを返してよ。バイト先にもすっごく迷惑を掛けることになるんだからね」
あっかんべーをして、プイッとそっぽを向く龍。
「龍成、なんだその態度は?」
遼に注意されても全く動じなかった。
「細貝、有原、光希のご両親と、度会さんと伊聡 さんにくれぐれも失礼のないように」
「分かりました」
あらかじめ準備しておいた東京土産のお菓子をふたりに渡した。
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